お酒は2合以上飲んではいけない
アルコールは日本酒に換算して
1合(ドリンク数に換算して2.2)くらいまでだったら、
かえって健康にいいことがわかっています。
具体的には、
善玉であるHDLコレステロールが増えて、
血液がさらさらに固まりにくくなります。
その結果、
血栓が血管に詰まることによって起きる
心筋梗塞や脳梗塞が減ります。
ところが、
2合を超えて飲むようになると、
今度は、HDLコレステロールが下がり
中性脂肪が増え、悪い影響が出てきます。
また、私たちの研究で、
飲酒量が増えるほど朝の血圧を
上げることがわかっています。
とくに、2合以上では、
寝ている間は飲まない人よりも低くなる血圧が、
朝になるとかなり高くなります。
人間の体はもともと、
朝方に交感神経が活発になって血圧が
上昇するようにできています。
そこにお酒をたくさん飲むことで、
より交感神経の働きが強くなるのです。
交感神経の働きが強くなると、
血圧が上がるだけでなく、
血小板凝集が起きて血がドロドロに固まりやすくなります。
さらに、
中性脂肪が増えることでも血液の
ドロドロは助長されます。
そうすると、どうなるでしょうか。
血圧が上がることで血管が切れる脳出血が増え、
血液がドロドロになることで血管が
詰まる脳梗塞や心筋梗塞も増えます。
つまり、2合以上飲む人は、
朝方に、
あらゆる循環器疾患に襲われやすいのです。
さらに、1合以上飲むと、
全体的にがんのリスクも上がってきます。
結論として、男性の場合、
1合未満であればほぼいい方向に働きます。
一方で、
女性は男性の半分くらいにして
おくのが良さそうです。
なお、
女性で2合以上習慣的に飲む人は
ほとんどいないので、
飲酒にかかわる研究は男性を
対象とするものが中心になっています。
1日3合以上飲むと自殺率が上がる
一度に2合以上飲むような人は、
その95パーセントがほぼ毎日飲んでいます。
つまり、週に14合以上飲んでいることになります。
こうした習慣的大量飲酒者は、
全体の1割くらいを占めています。
JPHCスタディで飲酒量と
自殺率の関係を調べたところ、
ある程度お酒を飲む人のほうが、
まったく飲まない人よりも
自殺率が低いことがわかっています。
ただし、
1日3合以上の割合で飲酒すると
自殺率が高くなります。
また、同じ量を飲むにしても、
みんなでわいわい飲む人のほうが、
1人で飲む人よりも脳卒中になるリスクが
低いことがわかっています。
また、社会的サポートが多い人では、
少ない人に比べて、
飲酒が脳卒中の及ぼす影響が
少ないこともわかっています。
いくらお酒が好きでも、
1人で大量に飲み続けるのはNGなのです。

なお、
短時間に大量(純アルコール量60グラム以上)の
飲酒を行うことを「ビンジドリンキング」と呼びます。
60グラムのアルコールというとだいたい3合です。
ビンジドリンキングは、
急性アルコール中毒になる危険性があるだけでなく、
長期的に見ても健康に害があることがわかっています。
とくに、
飲むと顔が赤くなる人は、将来、
食道がんになるリスクが上がります。
顔が赤くなるということは、
アルコールの分解能力がもともと低いので、
害も受けやすいと言えます。

加えて、
喫煙習慣があるとさらにリスクが上がります。
顔が赤くなりやすい人が、
タバコを吸いながら大量飲酒をするのは、
非常にマズいことなのです。