「まるでウイルス」ミトコンドリアは 人間の脳細胞に自分の DNAを送り込んでいた!


2024/9/7

「まるでウイルス」ミトコンドリアは 人間の脳細胞に自分の DNAを送り込んでいた!

 
 
 
 
 
 
 
 

「まるでウイルス」ミトコンドリアは

人間の脳細胞に自分の

DNAを送り込んでいた!

 

 

アメリカのミシガン大学(UMich)で

行われた研究により、

 

ミトコンドリアが私たちの脳細胞に

自分自身のDNAを送り込み

続けていることが示されました。

 

 

送り込まれたDNAは核内のDNAに入り込み、

脳細胞の遺伝情報を変異させてしまいます。

 

また研究ではこの現象と寿命の関係が調べられており、

ミトコンドリアDNAが多く取り込まれている人ほど、

早死にすることが示されています。

 

なぜミトコンドリアたちは自分たちのDNAを、

人間の脳に送り込み続けていたのでしょうか?

 

研究内容の詳細は2024年8月22日に

PLOS BIOLOGY』にて公開

 

ミトコンドリアDNAは

ウイルスのように振る舞う

 
 

私たちの細胞に含まれるミトコンドリアは、

古代の細菌の子孫であることが知られています。

 

 

いまから15~20億年前に、

私たちの祖先は酸素呼吸能力を持った

ミトコンドリアの先祖を細胞内に閉じ込め、

自らも酸素呼吸ができるように進化したのです。

 

 

このようにミトコンドリアは

他の生物種を起源にしており、

 

ミトコンドリアは独自の37個の

遺伝子を持つことが知られています。

 

 

しかし近年の研究により、

しばしば自身のDNA断片を放出しており、

 

その断片が人間のDNAに組み込む

性質を持っていたことが明らかになりました。

 

 

 

ミトコンドリアDNA断片が核内に取り込まれる様子
 
ミトコンドリアDNA断片が核内に取り込まれる様子 
 
 
 
 
 
ウイルスなどでよく知られています。
 
 
 

たとえばエイズウイルスなどでは、

自身の遺伝子(RNA)をDNAに変換して、

細胞のDNAに組み込み、

増殖の効率化を図ります。

 

 

このような挿入された断片は

核内ミトコンドリアDNA断片(NUMT)と呼ばれており、

 

15~20億年前に共生が始まって以降、

 

私たちの染色体内部に営々と蓄積され続けており、

現在の私たちの染色体内部には、

 

多くは先祖から受け継いだ

ミトコンドリアDNA断片が何百個も存在しています。

 

 

ただ既存の研究では、

このようなミトコンドリアDNA断片の移行は

非常にまれだと考えられていました。

 

 

実際、新しいミトコンドリアDNA断片が

ヒトゲノムに組み込まれるのは4000回の出生につき

1回程度だと考えられています。

 

 

親から子にミトコンドリア

断片の移行が「遺伝」するには、

 

生殖細胞内で移行イベントが

起こらなければなりません。

 

 

さらにそのような移行に害があった場合、

胎児の成長が失敗するなどして、

排除されてしまいます。

 

 

多くの人々がミトコンドリアのDNA断片を抱えながら

健康でいられるのは、

挿入された断片の機能や挿入が起きた場所が

無害だったからだと言えるでしょう。

 

 

ただミトコンドリアは生殖細胞だけでなく、

全身の細胞に存在しています。

 

そのため遺伝に関係ない細胞

(生殖細胞でない細胞)において、

 

ミトコンドリアDAN断片の移行がどうなっているかは、

あまり詳しくわかっていませんでした。

 

 

生殖に関係のない細胞であっても、

細胞や肝臓の細胞は私たちの

健康にとっては重要な細胞です。

 

 

そこで今回、ミシガン大学の研究者たちは、

特に脳細胞をターゲットにして、

 

ミトコンドリアDNA断片の

移行がどれほど起きているか、

そしてどんな影響があるかを調べることにしました。

 

 

 

 
挿入が頻繁に起きている
 
 

細胞ではどれほどのミトコンドリア

DNA断片が移行しているのか?

 

 

答えを得るため研究者たちは、

死亡した1000人以上の高齢者から脳サンプルを採取し、

染色体内部に潜むミトコンドリアDNA断片の量を調べました。

 

 

すると、ミトコンドリアDNA断片の挿入は、

人間の理性や認知にかかわる前頭前野の

ニューロンに最も多く起きていたことが示されました。

 

 

また被験者たちの死亡した年齢と比較すると、

前頭前野へのミトコンドリアDNA断片が多い人は

少ない人よりも早く死亡していたことが判明しました。

 

 

この結果から研究者たちは、

ミトコンドリアDNA断片の蓄積が脳の老化や機能低下、

寿命に関連している可能性があると結論しました。

 

 

 

画像
 
 
 
 
 
 
ミトコンドリアの先祖も
 
自分自身のDNAを多く保持していました。
 
 

しかし、

長年にわたる共生により徐々に

オリジナルの遺伝子を手放していきます。

 

 

このような遺伝子のパージは共生生物や

寄生生物に広くみられる現象です。

 

 

生命維持に必要な栄養素などを宿主に

頼ることができるならば、

 

それを自作するための遺伝子を持っていることに

メリットがなくなってしまうからです。

 

 

そのため現在のミトコンドリアの

オリジナル遺伝子数は37個、

総塩基も1万6600文字まで減少してしまっています。

 

 

(※一方、宿主であるヒトDNAの塩基数は

60億文字に達します)

 

今回の研究結果は、ミトコンドリアから

人間へのDNAの移行が現在も活発に進行中

であることを示していると言えるでしょう。

 

 

 
ストレスがミトコンドリアDNA断片の

移行を加速させる

 
 

最後に研究者たちは、

ミトコンドリアDNA断片の組み込みを

加速させる要因を調べました。

 

もしどの細胞でも等しく起こるならば、

前頭前野だけで断片が多くなる

理由が説明できないからです。

 

 

研究者たちは手掛かりを得るために、

長期に渡り培養されている人間の皮膚細胞を調査し、

ミトコンドリアDNA断片の移行を促す要因を調べました。

 

 

すると培養細胞は通常ならば1カ月あたり

数個のミトコンドリアDNA断片を蓄積していったものの、

 

細胞のミトコンドリアがストレスによって機能不全に陥ると、

4~5倍の速さで蓄積していったことが判明しました。

 

 

この結果は、

ストレスによりミトコンドリアはDNAの一部を放出しやすくなり、

これらの断片が細胞核内部のゲノムに

感染している可能性があることを示しています。

 

 

 

 

ストレスがミトコンドリアDNA断片の移行を加速させる
 
ストレスがミトコンドリアDNA断片の移行を加速させる 
 
 
 
 
 
非常に活発にエネルギーを消費し計画、意思決定、
 
問題解決、社会的行動、感情の調整など、
 
複雑な認知機能を担っています。
 
 
 

もしかしたら前頭前野のミトコンドリアは

脳内の他の領域に比べてストレスに

晒されやすい状態になっているのかもしれません。

 

 

研究者たちは今後、

ミトコンドリアDNA断片の移行が精神疾患の

リスクとどのように関係するかを

調べていくと述べています。

 

 

 
<参考:>

 

 




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