<睡眠中に脳のリフレッシュを促し
認知症の予防に役立つ
最適な瞑想法がわかった──>
ある種の瞑想法を実践すれば脳を平均して
6歳ほど若返らせ、
しかもアルツハイマー病や
認知症のリスクを軽減する可能性があるという。
適切な瞑想と深い眠り、
そして健康的な食生活の3点セットを
「早い時期から実践していれば、
それだけ認知症の進行を遅らせ、
あるいは症状を改善できる」と本誌に語ったのは、
米ハーバード大学医学大学院の
バラチュンダル・スブラマニアム教授。
同大学院関連病院のマサチューセッツ
総合病院などの研究者が今年5月に
オンライン学術誌「マインドフルネス」で
発表した論文の共同執筆者だ。
瞑想が心身の健康向上に
有益なことはよく知られており、
免疫系の機能改善や不安の軽減、
記憶力の維持などに役立つとされる。
そして今回の論文によれば、
アルツハイマー病その他の
認知症発症リスクを減らし、
予防する効果も認められたという
(アルツハイマー病の患者は
アメリカだけで700万人を超える)。
研究者らは集中的なヨガ合宿の参加者34人
(平均年齢38歳)を対象に、
睡眠時の脳波などを測定した。
すると、
ヨガに基づく瞑想を実践している人の
脳年齢は実年齢よりもかなり若いことが分かった。
とりわけ1日2時間以上の瞑想を行う
「上級瞑想者」では実年齢より5.9歳も脳年齢が若く、
脳の老化ペースが落ち、
むしろ若返っている可能性が認められたという。
なぜか。
原因として考えられるのは睡眠の質の違いだ。
脳波測定によると、
長時間の瞑想を行う上級者では、
瞑想をしない人よりも睡眠の質が高く、
睡眠中に脳内物質の交換が活発に行われ、
リフレッシュされていた。
「つまり若返りであり、
炎症を抑える効果が認められる」と
スブラマニアム教授は言う。
さらに、
瞑想をする人は瞑想をしない同年代の人と
比べて記憶力がよく、
思考が明晰で、ストレスや
孤独を感じにくいことも分かった。
ただし
「この研究だけで瞑想が脳の老化に
ブレーキをかけると結論することはできない」と、
ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生大学院の
タマル・メンデルソン教授は指摘する。
それでも瞑想は
「健康、とりわけ脳の健康増進に
つながる習慣」と考えられるので、
もっと真剣に研究されるべきだという。
ちなみにスブラマニアム教授は、
大切なのは瞑想する時間の長さよりも「質」だと考える。
「瞑想は『する』ものではなく、
ある状態に入ることだ」と教授は言う。
そして不慣れな人がその「状態」に入るためには、
やはり適切な指導の下で
瞑想の方法を学ぶことが必要だと考えている。