「ニューラルネットワーク」の仕組み、 よく理解していますか?… 50年以上も前に生み出された 計算システムの、 意外と知らない動作原理とは


2025/3/8

「ニューラルネットワーク」の仕組み、 よく理解していますか?… 50年以上も前に生み出された 計算システムの、 意外と知らない動作原理とは

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「ニューラルネットワーク」の仕組み、

よく理解していますか?…

50年以上も前に生み出された

計算システムの、

意外と知らない動作原理とは

 
 
 
 

「いつの日かAIは自我を持ち、

人類を排除するのではないか―」

2024年のノーベル物理学賞を受賞した

天才・ヒントンの警告を、

物理学者・田口善弘は真っ向から否定する。

 

理由は単純だ。

人工知能(AI)と人間の知能は本質的に

異なるからである。

 

しかし、

そもそも「知能」とは何なのだろうか。

その謎を解くには、「知能」という概念を再定義し、

人間とAIの知能の「違い」を探求しなくてはならない。

 

生成AIをめぐる混沌とした現状を物理学者が

鮮やかに読み解く田口氏の

著書『知能とはなにか』より、

一部抜粋・再編集してお届けする。

 

 

 

 

『ゴミを片づけられるロボットは

知能を持つといえるのか…

人間の“常識”を持たせるため、

科学者は人工知能に「身体」を与えた』

 

 

ニューラルネットワークの誕生

 
 

古典的記号処理パラダイムの解決を目指した、

もう一つのアプローチは、

脳の基本的な構造体に基づいた

ニューラルネットワークの動きだ。

 

ニューラルネットワークという名前を出しても

わからない人も多いのではと

思うので簡単に説明しよう。

 



ニューラルネットワークは正に

人間の脳の機能素子ともいうべき神経細胞、

 

いわゆるニューロンの構造(図表1-5)に

ヒントを得た計算システムだ。

 

 


ニューロンは簡単に言うと多入力1出力の

多数決システムである。

 

ニューロンは論理回路といっても細胞だから

実際にやり取りしているのは真偽の2値ではないが、

 

多入力の多くが「オン」(興奮状態ともいう)

ならば出力も「オン」になり、

そうでなければ「オフ」になる、

という性質を持っている。

 

 

 

 

 

ニューロンの信号伝達の仕組みを簡単に説明しよう。

 

ニューロンの信号伝達の仕組みは

電気化学的なものである。

 

電気化学的、

という意味は信号伝達に電気と化学を

併用しているからだ。

 

細胞内の信号伝達、

つまり周囲の神経細胞から樹状突起で受け取った

信号を変換して信号に変え、

 

軸索終末まで伝達する部分を電気で、

軸索終末と他の神経細胞の樹状突起のあいだの

信号伝達を化学物資の輸送を介した

化学反応で行っている。

 

 

このように、

仕組みこそ通常のコンピュータとは異なるものの、

形式的な回路という意味では

(アーキテクチャは異なるものの)

「オン」「オフ」の2値をベースとした

論理演算回路とみなせないことはない。

 



この多入力1出力の多数決システムを

 

コンピュータの中で実現したのが

ニューラルネットワークである。

 

だから、ニューラルネットワークは

人間の知能を司る脳の仕組みを模した

胡乱なシミュレーターだということができる

(ここでニューラルネットワークは

シミュレーターだということが後で大きく

効いてくるのでよく覚えておいてほしい)。

 

 

ニューラルネットワークの

動作原理

 
 

ここでニューラルネットワークの動作原理について

簡単に説明しておく。

 

難しい話となるので、

理解に困難を感じた場合は、

次の「小見出し」まで読み飛ばしても

以後の理解には影響しない。

 



前述のようにニューラルネットワークは

「多入力1出力」の素子である。

 

これを使ってどのように学習を

行うかを図を使って簡単に説明する。

 



まずは平面内に分布している○と×があったとき

(図表1-6)、新たに加わった●が○の仲間か×の

仲間かを判別する機械学習に

ニューラルネットワークを使う方法を説明しよう。

 

 

 

ぱっと見明らかに●は○の仲間である。

 

これをニューロンの「多入力1出力」を表現する

数式で判別できるようにするにはどうしたらいいのか。

 

実は、点線の左は○、右は×になるようになっている。

 

点線の左側は、○から縦軸と横軸に垂線を引いたときの

原点からの距離を足した値

(AとB)が2以下、×は2以上、である。

 



したがって、

縦軸に垂線を引いたときの原点からの距離A(入力1)と

横軸に垂線を引いたときの原点からの距離B(入力2)を足して、

 

2以上なら発火(1出力)となるようにすればいい。

 

このルールを覚えることがニューロンの学習である

(この場合、○は「発火しない」側になる)。

 

 

(※発火:神経細胞に刺激が加わり、

興奮を引き起こすインパルスが生

 

 

 

ニューロンが2つ以上の

複雑なパターン

 
 

ニューロンが2つ以上(これらをそれぞれニューロン1、

ニューロン2とする)になるともっと複雑な

パターンが学習できる(図表1-7)。

 

新たに加わった破線を見てほしい。

破線の上側に位置する記号から、

縦軸と横軸に垂線を引くと、

縦軸に引いた垂線の原点からの距離(A)が

横軸に引いた垂線の原点からの距離(B)より

大きくなっている。

 

 

 

一方、破線の下側は、これとは逆になっている。

 

そこで、縦軸に垂線を引いたときの原点からの

距離A(入力1)が横軸に垂線を引いたときの

原点からの距離B(入力2)より大きければ

発火(1出力)するものをニューロン2とする。

 



ここで、

前述したニューロン1とニューロン2を組み合わせた

ニューロン3を作る。

 

例えばニューロン1が発火せず(入力1)、

ニューロン2が発火した(入力2)場合に、

ニューロン3が発火(1出力)するようにするのだ。

 

これを組み合わせればいくらでも複雑な

パターンを分類することができる。

 



このニューラルネットワークは大元をたどれば

古典的記号処理パラダイムが行き詰まりを見せた

 

1980年代に発想されたものでは決してなく、

実際にはさらに数十年さかのぼった

時代の研究の再発見に過ぎない

 

(講談社ブルーバックス『脳・心・人工知能』は

この数十年前の時期のパイオニアの

日本人研究者が後年、

その当時を振り返って著した本に他ならない

〈章末コラム「日本人がとってもおかしくなかった

ノーベル物理学賞」参照〉。

 

ちなみに私はこの再発見時代に

ちょうど大学院生だった)。

 

 

『人工知能研究が冬の時代に…

革新的と思われた

「ニューラルネットワークによる研究」に

潜んでいたまさかの”落とし穴”』

 

 

<参考:田口 善弘・中央大学理工学部教授>

 

 




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