結局、レスベラトロールに
「長寿」の効果はあるの?
研究はまず仮説をたて、
それを実証していくのが一般的な手法です。
しかし、
必ずしも仮説がうまく実証されていくわけではありません。
むしろ矛盾のあるデータが出てしまう
場合が多いことも事実です。
そんなとき人間は弱いもので、
ついデータを書き換えてしまう誘惑に
駆られてしまいます。
小保方さんに関していうと、
偶然にでも、
1度はSTAP細胞を作り出したのは
事実だったのではないかと私は思います。
しかし、残念ながら彼女の研究の進め方に原因があり、
STAP細胞の再現ができないために、
あのような結果になってしまったのでしょう。
このような研究の創作や偽装は多く存在していますので、
レスベラトロールの発見もそうだと思い込んでいました。
ところが、
その後レスベラトロールの発見は
間違いないとする論文が、
元々の発見の研究者から報告されたのです。
その内容は、
アセチル基を外す相手のタンパク質の性質次第で、
反応が進んだり進まなかったりするという内容でした。
この内容には私も驚きました。さっそく、
このことが事実かどうか検証の実験を行いました。
その結果は正否半々といったところでしょうか。
結論からいうと、
やはりレスベラトロールには
脱アセチル化を進める活性はないか、
あったとしてもあまり強くはないと思われます。
レスベラトロールは
「メタボ」や「老化」を予防する
では、
レスベラトロールには健康寿命を
延ばす力はないのでしょうか?
そんなことはありません。
レスベラトロールにはサーチュインの
脱アセチル化反応を促進する活性はあまりありませんが、
サーチュインの遺伝子発現を促進する活性は強いので、
結果的にメタボリックシンドロームや老化に
伴う疾患を予防する機能があります。
遺伝子の発現量が多いことは結果的に
サーチュイン自体の量が増えることになり、
脱アセチル化活性も高まることになるからです。
健康寿命を延ばすにはサーチュインの
脱アセチル化を促進させる方法と、
サーチュインの遺伝子発現量を
増加させる方法の2通りがあります。
サーチュインの遺伝子発現を
増加させる成分について説明します。
[図表1]をご覧ください。
サーチュインの遺伝子発現を増加させる成分には、
レスベラトロールをはじめ、エラグ酸、ウロリチンなどの
エラグ酸誘導体、アクテオシドなどのフラボノイド類、
ブテイン、ピセアタンノール、フィセチン、
ルテオリンなどがあります。
これらのうち、
成分の量あたりの強さを比較すると表に示すように、
比較的強いのがレスベラトロールです。
「赤ワイン3L分」
がもっとも長寿に効果的
レスベラトロールはブドウの種子に含まれていますが、
普通ブドウのタネは食用にはしません。
それでは
食品からレスベラトロールを
摂取するにはどうしたらいいか。
その答えは赤ワインです。
赤ワインは、
ブドウを皮や種子ごとつぶしてそれを
発酵させて製造されます。
ですので、
製造過程でタネが含まれるため必然的に
赤ワインの中にはレスベラトロールが含まれます。
一方、白ワインはブドウをつぶして濾過をしてから
得たブドウジュースを発酵して作るので、
白ワインにはレスベラトロールは含まれていません。
それでは、
健康効果を期待してレスベラトロールを摂取するためには、
どのくらい赤ワインを飲んだらよいのでしょうか?
赤ワインの種類にもよりますが、
レスベラトロールは赤ワイン1杯に多くても
1mg程度しか含まれず、
赤ワインを多飲するといわれている
ヨーロッパ人の1日摂取量もわずか2mgと、
食品としての赤ワイン摂取で
健康に良い影響を与えることは少なそうです。
さまざまな実験データから、
レスベラトロールの健康に良い影響を与える
必要摂取量は1日あたり
30mgから150mgといわれています。
仮に30mgとして、
赤ワインでレスベラトロールを摂取するには
3Lも赤ワインを飲むことになります。
これでは、
健康に良いどころか肝炎になってしまいます。
肝炎にならなくても、
アルコール中毒になってしまいそうです。
<まとめ>
・レスベラトロールはメタボリックシンドロームや
老化に伴う疾患を予防する機能がある
・レスベラトロールはブドウの種子に含まれている
<参考:今井 伸二郎医学博士>
代謝機能研究所所長/東京工科大学名誉教授/藤田医科大学客員教授