自分は運がいい人間だ、と決め込んでしまう。
これが運をよくするコツのひとつです。
何の根拠もなくていいのです。
これまでに、
自分にはこんなにツイていたことがあった、
という過去の実績がなくてもかまいません。
とにかく「自分は運がいい」と決めてしまうのです。
直感力に関する調査結果を見たことがありました。
パートナーの浮気を見抜くのは
男性よりも女性のほうが得意、
というイメージがありませんか。
この調査を行った人も、
女性のほうが男性より直感力がすぐれている
という仮説のもとに調査を開始しました。
実際、
「自分は直感力がすぐれていると思うか」
という質問に対して、
「すぐれていると思う」と答えたのは
女性のほうが多かったのです。
しかし、
いざ嘘(うそ)を見抜かせる実験をすると、
わずか1%程度の微妙な差でありながら、
男性のほうが嘘を見抜いた人が多い、
という結果になりました。
この実験で、
主観的な直感力の尺度と客観的な直感力の
尺度には開きがあることがわかったのです。
これは、
自分で「直感力がすぐれている」と思っている人に、
その根拠がほとんどないことがわかった、
ともいえますね。
運についても同じようなことが
いえるのではないでしょうか。
世の中には「自分は運がいい」
と思っている人と、
「自分は運が悪い」と思っている人がいますが、
「運がいい」と思っている人に明確な
根拠がある場合は少ないように思います。
つまり、
これから「自分は運がいい」と
決めようとしている人にも特別な
根拠はいらないのです。
根拠はなくても
「自分は運がいい」と決めてしまったほうが、
実際に運はよくなるのです。
ではなぜそういえるのでしょうか。
たとえば仕事でうまく契約がとれなかったとしましょう。
自分は運がいいと思っている人は、
「自分は運がいいのに契約がとれなかった。
ということは、
準備の段階で自分にミスがあったのかもしれない。
あるいは自分に勉強不足のところが
あるのかもしれない」などと考えます。
一方、
自分は運が悪いと思っている人は、
「自分はこんなに努力しているのに、
運が悪かったから契約がとれなかったのだ」と考える。
運がいいと思っている人には
努力の余地が生まれますが、
運が悪いと思っている人には
その余地は生まれないのです。
運がいいと思っている人は、
努力次第で次回の契約がとれる
可能性が高まりますが、
運が悪いと思っている人はそうはなりません。
あるいは、
夫婦や恋人同士などの人間関係。
「私は運がいいからこの人と一緒にいられるのだ」
と考えます。
ケンカをしたとしても、
「自分に至らないところがあったのではないか」
などと思える。
しかし運が悪いと思っている人は、
「自分はこんなに努力をしているのに、
相手はわかってくれない。
こんな人を選んだ自分は運が悪い」などと考えてしまう。
パートナーとの仲をいっそう深める
チャンスが生まれますが、
運が悪いと思っている人には生まれない。
それどころかますます不仲のほうへと
舵(かじ)を切ってしまうのです。
実は、
運がいいと思っている人も悪いと思っている人も、
遭遇している事象は似ている場合が多いのです。
しかしその事象に対するとらえ方、
考え方が違う。
対処の方法も違う。
長い年月を積み重ねれば、
おのずと結果は大きく変わってくるでしょう。
だからやはり、
何の根拠もなくても「自分は運がいい」と
決め込んでしまったほうがいいのです。
「自分は運がいい」という思い込みと
セットにしてもち合わせたいのが、
プラスの自己イメージです。
何か課題を与えられたとき、
試験に挑戦するとき、
スポーツの試合に出るときなどに
プラスの自己イメージをもちます。
するとそれが、
結果によい影響を与えるのです。
たとえば会社で、
難易度の高い、
しかも重要なプロジェクトを任されたとしましょう。
そんなとき、
自分に対するよいイメージを思い浮かべるのです。
今回も成功できる。
むずかしいプロジェクトを任されたということは、
日ごろの努力と成果が認められたということだ。
難関といわれる試験にも自分は
合格できたのだから、
今回も大丈夫!
などというように。
あるいは、自分ならやれる、
私ならできないはずがない、
などでもいいのです。
プラスのイメージに特別な根拠はいりません。
根拠のない自信さえあればいいのです。
そのほうが、
プロジェクトが成功する確率が高まるのです。
このことを証明する実験が、
イギリスで行われた
メンタルローテーションタスクの実験です。
メンタルローテーションタスクとは、
ひとつの図形(平面の図形の場合もあれば、
立体の図形の場合もあります)が示され、
それと同じ形のものを羅列された
5、6個の図形の中から選ぶ、
というもの。
羅列された図形のほうは回転して
示されているために、
ひと目で同じ図形を見つけるのは至難の業です。
メンタルローテーションは日本語で
「心的回転」という意味ですが、
文字どおり、
元の図形を見つけるためには、
頭の中で図のイメージを思い浮かべて
回転させる必要があるのです。
そしてこのメンタルローテーションは、
一般的に男性のほうが女性より早く
しかも正確に答えを出せる、とされています。
この実験では、
アメリカ人の大学生にメンタルローテーションテスト
をやってもらうのですが、
テスト前に簡単なアンケートが実施されました。
実は、このアンケートがこの実験の肝なのです。
そのアンケートで性別の質問をされた場合、
女子学生の正答率は男子学生の64%でした。
一方、アンケートで自分の所属大学を
質問された場合、
正答率は男子学生の86%まで上がったのです。
被験者の多くは有名校のエリート学生でした。
アンケートで所属大学を答えることで、
私は有名大学のエリート学生だという
プラスの自己イメージがわき、
それがテストによい影響を与えたのです。
このように、
プラスの自己イメージは
パフォーマンスに直接影響を与えます。
そこで、何かに取り組むとき、
何かに挑戦するときには、
マイナスの自己イメージはなるべく
排除する努力をして、
できるだけプラスの自己イメージを
もつようにするのです。
そして、このプラスの自己イメージは、
「運がいい」という思い込みと
セットにするとよいサイクルが回ります。
プラスの自己イメージをもっていると、
新しい挑戦や課題に成功しやすくなります。
成功すると「やっぱり運がいい!」と思える。
自己イメージのレベルも上がるので、
次の挑戦もしやすくなります。
また、
仮に次の挑戦には失敗してしまったとしましょう。
先ほども書きましたが、
「運がいい」と思っている人は
ここで反省ができます。
その反省から次への努力が生まれ、
次の挑戦で成功できたとしたら、
またよいサイクルに戻ることができるのです。
<参考:中野信子 脳科学者、医学博士>
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