ようやく見えてきた ミトコンドリアの「真の姿」 細胞内にこんな“機械的”な システムが備わっていた!


2026/2/25

ようやく見えてきた ミトコンドリアの「真の姿」 細胞内にこんな“機械的”な システムが備わっていた!

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ようやく見えてきた

ミトコンドリアの「真の姿」

細胞内にこんな“機械的”な

システムが備わっていた!

 
 
 
 

命とは何か?「細胞」から見えてきた命の正体

 
 

「不死の細胞を持った女性がいた――」

「細胞内を2本足で歩くものがいる!?」などなど、

命の最小単位「細胞」の秘密を知れば、

 

「まさか、こんなことが自分の体の中で

起きていたなんて!」と思うはずです。

 

 

最先端の生命科学が今「命」を解明中。

 

 

 

風府(ふうふ):督脈のツボ

『細胞の居候「ミトコンドリア」が細胞内の発電所役!? 

 

 

ようやく見えてきた

ミトコンドリアの「真の姿」

 
 

ミトコンドリアといえば、

中学・高校の生物でも登場するメジャーな存在です。

 

細胞の模式図(図1下)に描かれた、

ヒダのついた豆のような楕円形のイラストに

見覚えがある方も多いでしょう。

 

実際、透過型電子顕微鏡で細胞内を撮影すると、

ミトコンドリアはそのような形に写ります(図1上)。

 

 

 

風府(ふうふ):督脈のツボ
図1 ミトコンドリアの透過型電子顕微鏡写真と一般的なイラスト例イメージギャラリーで見る

 

 

ところが近年、

細胞内にあるミトコンドリアの「真の姿」は、

私たちが教科書で学んできたものとは

ちょっとイメージが違うことが明らかになってきました。

 

 

命とは何か?「細胞」から見えてきた命の正体⑩

紹介した「生体のエネルギー通貨」

ATPの生産についてお話しする前に、

まずは最新のミトコンドリア像をご覧いただきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

画像①は、

細胞内の狙ったものだけを染色して光らせる、

「蛍光顕微鏡」という技術で、

 

ふたつの細胞を撮影した画像です。

 

中央に見える青い円が核で、

その周囲に広がる無数の赤い糸のようなものが、

 

すべてミトコンドリアです。

 

実はミトコンドリアは分裂と融合をくり返しており、

 

ひとつの細胞内でもさまざまな

形状をとることが明らかになっています。

 

長く伸びた糸状になることもあれば、

豆のような形になることもあるというわけです。

 

こうした活動は

「ミトコンドリア・ダイナミクス」と呼ばれ、

盛んに研究されています。

 

 

図1の透過型電子顕微鏡で観察されている

「ヒダのついた楕円形」は、

 

躍動するミトコンドリアの一部を切り取った

「断面図」だったのです。電子顕微鏡は

光学顕微鏡よりも微細な構造を可視化できると

 

命とは何か?「細胞」から見えてきた命の正体⑧

でご紹介しましたが、

 

基本的にはサンプルの一断面しか観察できません。

 

ひとつのミトコンドリアを一本のソーセージにたとえるなら、

「豆のような楕円形」は、

それを輪切りにした断面を

見ているようなものだったのです。

 

 

学校で習う細胞のイラストは理解を助けるために

簡略化されているとはいえ、

 

まさに教科書が書き換わるほどの違いです。

 

ミトコンドリアの姿ひとつとっても、

「わかっているようで、実はよくわかっていない」

 

ことが生命科学の世界にはいかに

多いかということを、改めて痛感させられます。

 

 

 

ミトコンドリアは緑色ではなかった?

 

さらに今回の取材を通じて、

ミトコンドリアの「色」についても個人的に

びっくりさせられたことがありました。

 

何となく、

教科書や参考書に載っている

ミトコンドリアのイラストは「緑色」で

描かれていた記憶があります。

 

みなさんもそうではないでしょうか?

 

そのため、

ミトコンドリアのCGを制作するのにあたり、

一般的なイメージどおりに

緑色で描こうと考えていました。

 

ところが専門家のみなさんに取材を

進めるうちに「どちらかと言うと、

 

赤褐色です」という指摘がありました。

 

ミトコンドリアに含まれている

「シトクロムc」という物質が赤褐色だというのです。

 

 

ただし、

細胞内のミトコンドリアは非常に小さいため、

そこに含まれる赤い色素が肉眼で

確認できるほどの量はありません。

 

基本的には、

他の細胞内の物質と同様、

ほぼ透明に見えます。

 

それでも、

内部に赤い色素が含まれていると知った以上、

 

それに準じてCGは赤褐色で描くことにしました。

 

こうして「まるで明太子のような」姿をした

ミトコンドリアが誕生したのです(画像②)。

 

 

 

画像② 細胞内の発電所ミトコンドリア(CGイメージ)。

内部ではタービンのような装置が高速回転し、

細胞が活動するエネルギー源となるATPという分子

(写真では光の粒子)が作り出されている。

ちなみに「人体Ⅲ」では細胞内のCGを制作する際、

このように「実際に含まれる色素」が

判明している物質に関してはその色を反映し、

 

それ以外のものについては視認性を高めるために

物質ごとに異なる着色をしています。

 

1ページ画像①で見た蛍光顕微鏡のように、

物質を任意に染色して示すことは研究でも

広く行われており、

 

そのおかげで極めて複雑な構造を、

より明確に把握できるようになっているのです。

 

 

 

あなたの中の「充電タービン」

 

蛍光顕微鏡でミトコンドリアをしばらく観察していると、

分裂と融合をくり返しながら、

あちこちに移動している様子が映し出されます。

 

最初、

ミトコンドリア自体に動く能力があるのかと

思ったのですが、

 

なんとこれもキネシンのような

モーターたんぱく質が運んでいるのだといいます。

 

 

ミトコンドリアの大きさは一定ではありませんが、

細胞の種類によっては長さ0.5マイクロメートルから

10マイクロメートルにまで達すると言われています。

 

そう言われてもピンとこないかもしれませんが、

これは命とは何か?「細胞」から見えてきた命の正体⑦

 

 

紹介した細胞内の荷物「小胞(しょうほう)」とは

比べものにならない巨大さです。

 

再びキネシンを160センチメートルの

人間にたとえてみると、

 

ミトコンドリアの大きさは大型トラックや、

50階建ての高層ビルに相当します。

 

それを大勢が協力しながら、

ワッショイワッショイと必要な場所へと

運んでいるわけです。

 

 

ミトコンドリアが必要な場所とはどんなところか?

それは、

 

細胞内でATPのエネルギーを多く使う場所です。

 

 

さて、

話をATPの産生方法に戻しましょう。

 

前回⑩でATPは

「充電式の電池のようなもの」とお伝えしました。

 

その電池を再充電する装置が

ミトコンドリアの中にあります。

 

 

ATPにはリン酸と呼ばれる

分子が3つ結合しているのですが、

 

これはいわば、

電池がフル充電された状態だと思ってください。

 

そして加水分解によって

水と反応するとリン酸が1つとれ、

 

そのときエネルギーが放出されます。

 

リン酸が2つになると

ADP(アデノシン二リン酸)という分子に変わり、

 

これはいわば電池切れ状態です。

 

私たちはモバイルバッテリーが切れたら、

コンセントにつないで充電しますよね。

 

それと同じように、

ミトコンドリアの中でADPにリン酸を

再び1つ加えることでATPに戻し、

再利用できるようにする仕組みがあるのです。

 

 

 

図2 水力発電とよく似ているATPの作られ方イメージギャラリーで見る

 

 

では、いったいどうやって

ADPをATPに戻しているのかというと、

 

これがまた驚異的なメカニズムによって

成り立っています。

 

ミトコンドリアの内膜には「ATP合成酵素」という、

その名のとおりATPを作ることに特化した

たんぱく質があるのですが、

 

その構造は精巧に作られた

回転モーターにそっくりです(図2下)。

 

 

ミトコンドリア内に存在する水素イオン( H+)が

ATP合成酵素を通過するたびに、

 

モーター部分が回転。

 

その回転エネルギーを使って

ADPにリン酸が1つ足され、

ATPが作られていきます。

 

 

ちょっと難しく聞こえますが、

分子科学研究所の飯野亮太さんは、

 

ATP合成酵素の働きを「水力発電」

にたとえて説明してくれました。

 

 

「水力発電所ではダムの高低差を利用して、

高いところから低いところへ水が流れる勢いで

発電機のタービンを回し、

 

電気を生み出しています。

 

一方、ミトコンドリアの中では水流の代わりに

水素イオンの濃度差を利用します。

 

物質は、

濃度の高いところから低いところへ

自然と移動する性質を持っています。

 

水素イオンがその性質に沿って移動する際、

ATP合成酵素を通ることでモーター部分が回り、

ADPが『充電』されるのです」(図2下)。

 

 

 

 

 

ATP合成酵素の数は、

細胞の種類やミトコンドリアの大きさによって

異なるため一概には言えませんが、

 

ひとつのミトコンドリア内に数千個はあると

見積もられています。

 

モーター部分の回転数は、

なんと1秒間に350回にも達することが

研究から明らかになっています。

 

ATP合成酵素のモーターが1回転するたびに、

ATPが3つ作られる仕組みです。

 

 

ちなみに水力発電所の発電タービンの回転数は、

60秒間におよそ

100から1000回と言われていますので、

 

 

ATP合成酵素は比較にならないほど

高速で回転していることがわかります。

 

 

このようにして、

ミトコンドリア内部では毎秒、

膨大な数のATPが作られています。

 

そしてそのATPのエネルギーがあるからこそ、

キネシンなどのたんぱく質が働くことができるのです。

 

 

こんなにも“機械的”なシステムが、

私たちの体内に備わっている

ということには驚きました。

 

 

そして何よりも、

人類が長い年月をかけて発明してきた

発電の仕組みと非常によく似た装置が、

 

太古の昔からミトコンドリアの中に

存在していたという事実に、

圧倒されます。

 

 

 

その呼吸はミトコンドリアに

ATPを作ってもらうため

 
 

ミトコンドリア内で

ATPが作られるために欠かせないのが、

 

 

酸素です。ちょっと休憩がてら、

深呼吸をしてみましょう。

 

すー、はー。すー、はー。いま、

 

あなたが吸った酸素は、

肺で赤血球へと受け渡され、

 

全身の血管を通じて個々の

細胞の中に運ばれます。

 

 

そして最終的にはミトコンドリア内部で

ATPを作るのに使われ、

 

その過程で発生する二酸化炭素を

私たちは吐き出いるので。

ヒトは1日に平均2万回の

呼吸をすると言われています。

 

 

オギャーと産声をあげてから息を引き取るまで、

 

呼吸は生涯休むことなく続きます。

 

 

また、

運動をしたあとに呼吸が荒くなるのは、

筋肉細胞が急速に大量のATPを消費したぶん、

 

ミトコンドリアが活発にATPを生産するため、

より多くの酸素が必要になるからです。

 

呼吸の目的が、ミトコンドリアに

ATPを作ってもらうためだったとは……

 

最初に知ったとき、

思わず「まさか」と声が出ました。

 

 

次回は『世界初の「ミトコンドリア移植手術」で

命を救われた少女

 

最先端研究でわかった驚きのレスキュー能力!』です。

 

 

命とは何か? 「細胞」から見えてきた命の正体

 

 

「私たちの命は、地球上のどんな

技術や富をもってしても再現できない、

 

奇跡の存在です」と語るのは

ノーベル賞科学者の山中伸弥さん。

 

 

タモリさんは、

「この奇跡を、普通に生きましょう」と語った番組が、

NHKスペシャル「人体Ⅲ」です。

 

 

テーマは、

「命とは何か?」という生命科学における究極の問い。

 

「死なない細胞」の存在を追って、

著者の塚越亮太さんの取材の旅は始まります。

 

 

ひとりの女性の細胞が70年以上死なずに

増え続けるのはなぜか?

 

その細胞のお蔭で、薬の開発や

生命科学の解明が進みました。

 

 

そして、

世界最先端の研究から、

命の最小単位である「細胞」の解明が今、

進んでいます。

 

細胞内は想像をはるかに超えた

「ワンダーランド」とも言えるような世界です。

 

 

2本足で歩く小さな妖精のような物体が

荷物を運んでいたり、

 

サッカーボールの形に合体する物質があったり、

 

同居人のミトコンドリアが細胞内の

物質を動かすエネルギー供給源とわかったり。

 

たとえば、

人が生きるのに必要な糖質を吸収するために、

細胞内では絶妙なチームプレーが

続けられているのです。

 

 

「喜怒哀楽」や「能力」「病気」「老化」なども

細胞レベルの研究が進んでいます。

 

脳の神経細胞では

“細胞内の運び屋”がせっせと

「喜怒哀楽の元」を運んでいるので

私たちは喜びや悲しみを感じます。

 

 

細胞を活性化する行動が

「能力」アップにつながることも明らかに。

 

老化の解明で抗老化薬の開発が進み、

若いころのように病気になりにくい未来が

もうすぐそこだと言われています。

 

 

世界最先端の研究者が命の探求を通して

生まれた哲学も紹介しています。

 

私たちも「命」の正体を知ることにより、

人生の見方も大きく変わるかもしれません。

 

 

 

<参考: 塚越亮太+NHKスペシャル>

 

 




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