僧侶12人の脳を測定、
瞑想中に何が起きていたのか
対象となったのは、ローマ近郊の
僧院に所属する上座部仏教の僧侶12人。
いずれも平均で1万5000時間以上という、
まさに「瞑想の達人」と呼べる人たちでした。
研究では、
僧侶たちが瞑想している最中の脳活動を、
「脳磁図」という特殊な装置で測定しました。
これは脳の神経活動が生み出すごく弱い
磁場を捉える技術で、
脳の動きをリアルタイムかつ
高精度で観察できます。
調べられた瞑想法は2種類です。
サマタ瞑想
呼吸など特定の対象に注意を集中させ、
心を安定させて深い静けさの状態に
至る集中型の瞑想法。
ヴィパッサナー瞑想
感覚や思考、感情など、
現在の瞬間に生じるものを
選別や評価をせずに観察し、
心の本質を理解しようとする
オープンモニタリング型の瞑想法。
研究者いわく、
「サマタ瞑想では、
懐中電灯の光を絞るように
注意の焦点を狭めるもの、
ヴィパッサナー瞑想では光を広げるように
注意の範囲を広げるもの」というイメージです。
分析の結果、
まず明らかになったのは、
瞑想中の脳が決して「何もしていない
状態ではない」という点でした。
脳の活動パターンはむしろ複雑になり、
脳全体が注意深く働いている
様子が確認されたのです。
特に重要なのは、
脳活動の「揺らぎ方」が変化していたことです。
普段の脳は過去の状態を引きずりながら
活動する傾向がありますが、
瞑想中の僧侶の脳ではその傾向が弱まり、
今この瞬間に合わせて柔軟に
切り替わる状態になっていました。
これは注意が研ぎ澄まされた状態を
保ちやすくなっていることを意味します。
「静かな脳」ではなく
「しなやかな脳」に
チームがさらに注目したのが、
「臨界性」と呼ばれる脳の性質です。
これは簡単に言うと、
脳が“秩序”と“混沌”のちょうどよい
バランスにあるかどうかを示す考え方です。
秩序が強すぎる脳は変化に弱く、
逆に混沌が強すぎると
情報処理がうまくいきません。
その中間にある状態が、
もっとも効率よく、
柔軟に働けると考えられています。
今回の研究では、
特にヴィパッサナー瞑想において、
脳がこの「ちょうどよいバランス」に
近づく傾向が見られました。
一方、サマタ瞑想では、
より安定して一点に集中した
状態が保たれていました。
つまり、
どちらの瞑想も脳を活性化させますが、
働き方の“方向性”が少し異なっていたのです。
また、
これまで「瞑想では脳波のある成分が増える」と
言われてきた点についても、
チームは慎重な見直しを行いました。
脳波の背景にあるノイズ成分を丁寧に
分離して分析した結果、
単純に「活動が増える・減る」と言える話ではなく、
脳の使い方そのものが
組み替えられていることが示唆されました。
<参考: 千野 真>
瞑想の達人である
「僧侶の脳波」を測った結果、
驚きの実態が判明