日々、踏みつけて気にも留めない土。
じつは、この土がなければ、
生命は誕生しなかった可能性があるという。
それだけではなく、
土は生物の進化や恐竜の絶滅、
文明の栄枯盛衰にまで関わってきた。
生命進化に限らず、
食糧危機、環境問題、戦争……
いま人類が直面しているリスクは、
「土」から見ると新たな景色が見えてくる。
土を主人公に46億年の地球史の
新たな一面を明かした
『土と生命の46億年史』が発売後、
大きな反響を呼んでいる。
長年、土一筋で研究を続けてきた
藤井一至さんが明かす、
いま私たちが知っておかなければならない
「土の話」とは。
恐竜が絶滅した理由を探る
三葉虫など地球上の生命の90パーセントが絶滅した
2.5億年前(ペルム紀末)の大量絶滅で生まれた
生態系の空白(ニッチ)に収まったのが爬虫類であり、
酸素濃度が回復するとともに一部が巨大化し、
前進歩行に適した骨格を備えた爬虫類のなかまは、
恐竜と呼ばれる。
高い酸素濃度が巨大化に有利になるのは、
石炭紀に巨大節足動物が出現した時と似ている。
恐竜の巨大化は、
背の高い針葉樹やイチョウを食べ、
分解しにくい葉を腸内でゆっくり
発酵・消化するのに
好都合だった。
その恐竜が6600万年前、
絶滅する。
直径約10キロメートルの
巨大隕石(小惑星)が
衝突したことで寒冷化したことが
原因とされている。
メキシコ・ユカタン半島沖で発生した
隕石衝突による粉塵(ふんじん)が世界を覆い、
太陽光を遮ったという。その痕跡は
世界各地に残り、
バーコードのような地層の中に
白い粘土層として刻まれている 【画像1】。

地球の表層にほとんどないイリジウム
(レアメタルの一つ)を多く含むことが
隕石由来であることの証拠だ。
恐竜絶滅の原因は
隕石が定説だが…
自分の目で見なければ納得できない私は、
カナダ・アルバータ州の地層を訪ねたことがあるが、
迫力不足で正直がっかりした。
カナダに残る粘土層はほんの
数センチメートルの厚みしかない 【画像1下】。
数メートルの火山灰が一度に堆積するのを
知っている日本人からすると、
隕石だけで恐竜が絶滅したとは考えにくい。
隕石以外にも恐竜絶滅との関わりを
疑われる物質には身近なものが多い。
チョーク、石油、土だ。
そもそもブラキオサウルスの繁栄した
ジュラ紀という地質年代は、
スイスとフランスを分かつジュラ山脈の
地層に由来している。
チャップリンの愛したワインを生んだブ
ドウ畑が美しい場所だ。
近くの森の土を掘らせてもらうと、
私のスコップはすぐに
分厚い石灰岩にぶつかった【画像2】。

アンモナイトを含む石灰岩は、
ジュラ紀から白亜紀
(白亜はチョークに由来)にかけて
存在した広大な亜熱帯の浅い海(テチス海)で
サンゴが化石化したものだ。
日本の岩手県龍泉洞(りゅうせんどう)、
岐阜県・滋賀県をまたぐ伊吹山(いぶきやま)、
山口県の秋吉台(あきよしだい)の
石灰岩も同じ仕組みでできている。
この時代、サンゴだけでなく、
テチス海で大繁殖した植物プランクトン
(シアノバクテリアなど)が
酸欠現象(海洋無酸素事変)のたびに
大量死して赤潮となり、
化石化した遺体が今日の中東の
石油(およびオイルシェール)となった。
この結果、
大気中の二酸化炭素が大量に
地下に固定された[参考文献4‒21]。