39歳のとき、
関節リウマチと全身性エリテマトーデス
(ループス)と診断され、
医師から「健康でいられるのはあと5年」
と告げられたレスリー・ケニーさん。
この衝撃的な宣告をきっかけに、
彼女は健康とフィットネスに対する
アプローチを根本から見直すことになった。
現在60歳になったレスリーは、
疾患を示すバイオマーカー(生体指標)が
消失しただけでなく、
なんと「21歳」相当の生物学的年齢を
手に入れているという。
今回は、
運動がいかにして彼女の健康と
長寿(ロンジェビティ)の旅において
重要な役割を果たしたのか、
イギリス版ウィメンズヘルスに
語ってくれた内容を紹介しよう。
レスリー・ケニー
起業家、患者支援活動家。
「Oxford Healthspan」創設者。
自身の健康問題を克服した経験から、
健康寿命を延ばすための情報を発信している。
絶望からの決意。
「あらゆる手段」で
病に立ち向かう
診断を受けた当時、
レスリーは精神的にも肉体的にも過酷な
不妊治療を経て、
自身が経営していた
オンライン・マッチングの
スタートアップ企業を退職したばかりだった。
ショックを受けていた彼女だが、
医師の予後を覆すために
「できることは何でも試す」と決意する。
「車に戻って気持ちを整理していたとき、
亡くなった祖母の声が聞こえた気がしたんです。
『レスリー、台所の流し台を投げつけるくらいの勢いで(※)、
ありとあらゆる手段をぶつけてやりなさい』って。
それで私は『よし、わかった』と思いました」
(※編集部注:英語の慣用句、
可能な限りのあらゆる手段を尽くすという意味)
この瞬間から、レスリーの食事、運動、
マインドセットの全面的な改革が始まった。
その結果、
43歳での自然妊娠(彼女はこれを
「奇跡」と呼んでいる)を経て、
昨年行われた「GlycanAge(グリカンエイジ)」
検査(慢性炎症を測定して生物学的年齢を
判定するテスト)では、
驚くべきことに21歳という数値を記録したのだ。
祖父母は京都大学出身。
東洋医学の「治癒力」に学ぶ
もちろん、
ここまでの道のりは平坦ではなかった。
新しい治療法へのアクセスを求めて粘り強く交渉し、
よりホリスティック(包括的)な
アプローチを受け入れる必要があった。
「私の祖父母は二人とも、
日本の京都大学医学部で学びました。
そこで西洋医学のプログラムだけでなく、
東洋哲学も学んだと聞いています」とレスリーは語る。
「体には治癒へ向かう『内なる知恵』
が備わっていると教わってきました。
私たちがすべきことは、
体の弱点となるものを取り除き、
体をサポートする要素を加えること。
一度バランスを取り戻せば、
体はどうやって自分を治せばいいかを
知っているのです」
このアプローチこそが、
彼女の予後を変え、
21歳並みの生物学的回復力を
築く助けとなったのだ。
長寿のカギは「抗炎症」と
「運動」の組み合わせ
レスリーの改革は、
2004年から2005年にかけての診断から
数ヶ月以内に始まった。
バリー・シアーズ博士の著書
触発された抗炎症ダイエットを取り入れ、
最終的には砂糖を完全に断ち
(「3年かかりました」と彼女は言う)、
トラウマセラピーも受けたという。
そして、
このパズルの非常に重要なピースとなったのが
「運動」だ。
「私が気にしているのは炎症マーカーだけです。
最大のリスクは再発ですから」と、
21歳という生物学的年齢の
結果について語るレスリー。
彼女にとって年齢は単なる数字に過ぎず、
その背後にある科学的根拠こそが
安心材料なのだ。
では、実際に彼女が実践し、
生物学的年齢を下げるのに重要な
役割を果たした
「5つのフィットネス習慣」を見ていこう。
1. 日常生活をジムにする
「ウォーキングとサイクリング」
当初、レスリーは「疲れやすかった」ため、
激しい運動は避け、
ただ外に出て多く歩くことから始めたという。
当時はロッキー山脈の近くに住んでいたため、
適度な抵抗(負荷)を加えるために
山登りも取り入れていた。
現在、イギリスのオックスフォードに住む彼女は、
環境のおかげで多くの動きを
日常に取り入れられていると話す。
ほとんどの場所へは徒歩か
自転車で移動しているそうだ。
「スーパーへは歩いて行かなければなりません。
駐車場が全くないので、
車で行くより歩くほうがずっと楽なんです。
つまり、
意識しなくても日常的に重い荷物を運ぶ
『ファーマーズキャリー』の
トレーニングをしているようなものです」
2座りっぱなしはNG!
「マイクロムーブメント」
を取り入れる
「日常生活に動きを組み込む」
という点において、
レスリーは徹底している。
「座りっぱなしの生活は、
非常に炎症を起こしやすいんです。
タバコを吸わない人でも、
座り続けることは喫煙と同じくらい、
あるいはそれ以上に体
に悪いことに気づいていません。
だから、
立ち上がって休憩を取る必要があります」
仕事中でも彼女は体を動かす。
「ミーティング中、
チームのみんなには変だと思われますが、
私は立ち上がって
『よし、今からスクワット10回やるわよ』と言います」
このインタビュー中も、
彼女の提案でZoom越しに一緒に
スクワットを10回行うことになった。
1時間に1回は体を動かそう
どのような動きでも構わないが、
重要なのは1時間ごとに何かを行うことだ
(彼女は30分ごとにスクワット10回を
日課にしている)。
「デスクワークの合間に
私が気に入っているもう一つのアイテムは、
底が丸いコルク製のバランスボードです。
スケートボードのようにバランスを取るのですが、
体幹に効きますし、
年齢を重ねた際の転倒防止に
不可欠なバランス感覚も養えます」
3. 激しければ良いわけではない。
「低強度エクササイズ」のすすめ
フィットネスの旅を始めた当初、
レスリーはヨガやピラティス
(リフォーマーを含む)を好んで行っていた。
これらは強度がそれほど高くなく、
体を動かすのに役立ったからだ。
HIIT(高強度インターバルトレーニング)も
試したことがあるが、
20〜30分程度なら楽しめるものの
「1時間はやりたくない」と感じたという。
「甲状腺の問題のせいかとも思いましたが、
興味深いエビデンスがあります。
生涯ウルトラマラソンを続けてきた
ある女性のケーススタディでは、
彼女は非常に健康で正しいことを
していると感じていましたが、
生物学的年齢は80歳という結果が出ました。
どうしてでしょう? 実は、
オーバートレーニング(過度な運動)だったのです。
若い頃は良くても、
年齢を重ねたら調整が必要だという
研究結果があります」
4. 自分にとっての
「ゴルディロックス・ゾーン
(適度な領域)」を見つける
そこで重要になるのが「回復」と「バランス」だ。
レスリーはこの原則を優先することを学んだという。
「誰もが自分は20代の頃と同じ
身体能力があると思いたいものですが、
体の回復力は同じではありません。
それは加齢に伴う心拍変動
(HRV)を見れば明らかです」
「だから、自分にとっての
『ゴルディロックス・ゾーン
(熱すぎず冷たすぎず、ちょうどいい領域)』を
見つけなければなりません。
運動不足は最悪ですが、
運動のしすぎも同様に最悪です。
適切なゾーンに留まる必要があるのです」
このゾーンは、
経験やバックグラウンドによって異なるため、
自分に合うものを見つけることが大切だ。
5. 日本発の技術に通じる
「血流制限トレーニング(BFRT)」
レスリーが絶賛するもう一つの方法は、
血流制限トレーニング(BFRT)だ。
これは、
体の特定の部位への血流を制限することで、
実際よりもハードな運動をしていると
体に錯覚させる方法である。
彼女は血圧計のマンシェット(カフ)
のようなバンドを使用している。
「軽くて持ち運びも簡単です」。
これを装着して圧力をかけ、
開放する。
「そうすると、
乳酸と一酸化窒素が一気に流れ出し、
脳の下垂体に『重いものを持ち上げた』
というメッセージが送られます。
実際には何も持たずにバイセップカール
(腕を曲げる動作)をしているだけでもです。
すると成長ホルモンが放出され、
全身を巡りますが、
特に『損傷した』と認識された部位に向かいます。
実際には損傷がないので、
筋肉の構築に使われるのです」
日本のリハビリ現場でも活用
彼女は、
これが日本で脳卒中患者のリハビリに
よく使われていることにも触れた
(※日本では「加圧トレーニング」
として知られる理論に近い)。
「日本で心臓の開胸手術を受けた場合、
手術室から出ると看護師が腕にバンドを巻き、
患者が鎮静状態でもバイセップカールの
動きをさせることがあるそうです。
開胸手術は骨や筋肉を切るため、
修復に多大なエネルギーを要します。
早く回復するためには
成長ホルモンが必要なのです」
実際、
近年の研究でもこのトレーニングの利点は
支持されている。
『Scientific Reports』に掲載されたレビューでは、
BFRTがアスリートの筋力、
パワー、スピード、持久力、
体組成を大幅に改善することがわかっている。
まずは「小さな習慣」を
ひとつだけ選んでみよう
情報が多すぎて何から始めればいいかわからない
場合はどうすればいいだろう?
レスリーのおすすめは「小さな習慣」だ。
「健康改善のためにできそうなことを
3つ書き出してみてください。
そして、
その中から1つだけを選びます。
3つ全部やってはいけません。
1つだけ選んで、
日常のルーティンに組み込むのです」
「例えば、
『トイレを流すたびにスクワットを10回やる』
『歯磨きのたびにスクワットを10回やる』など、
すでに行っている行動と結びつけるのがコツです」
まずはそこから始めて、
継続すること。
「自分にとって一番楽なことから始めてください。
人生をわざわざ難しくする
必要はありませんからね」
※この記事はイギリス版
ウィメンズヘルスの翻訳をもとに、
ウィメンズヘルス日本版が編集して掲載しています。





