■大学3年生の長男「医学部を受けたい」
50歳を過ぎたビジネスパーソンの話です。
そろそろ会社での先行きも見え、
あとは定年までそつなく勤め上げれば
いいかと思っていました。
守りの態勢に入っていたのです。
ところが大学3年生の長男が、
突然、「受験したい」といい出しました。
「オレ、やっぱり医者になりたいから、
いまの大学辞めて勉強して医学部を受けたい」
これを聞いたときは、驚いたそうです。
大学3年だから就職活動も始めて、
就職もまあなんとかなるだろう、
あと2年の頑張りで仕送りからも
解放されると思っていたのに、
また一からやり直しです。
しかも医学部ともなれば学費も高いし、
卒業まで6年かかります。
「うーん、予備校に通ってもいまから勉強じゃ
来年の合格はむずかしいだろう。
となればもう1年、予備校か。
それで合格できたとしてもそれから6年か」
■人の夢が自分の夢をふくらませる
いったい自分はいくつになるのかと考えて、
愕然(がくぜん)としました。
「60歳じゃないか」
定年までは高望みせず、
無事に過ごせればいいと考えていたのです。
かりにリストラが始まって早期退職を
募るようなことがあっても、
自分から動くつもりなんかありませんでした。
けれども長男の夢を聞いているうちに、
このビジネスパーソンは猛然と
意欲が高まってきたそうです。
「よし、オレもあと8年間、
やり残しの悔いなんか残さないように
強気で仕事をしてみるか」
40代のころから実現させたかったプランがありました。
50歳になったときにも新しい
事業展開を提案してきました。
どちらも仕事の夢だったはずです。
それを残り8年の間に、
なんとしても実現させてみようという
気持ちになったのです。
「おまえなりに考えたんだろうから
医学部に挑戦してみろ。
オレもオレで、やりたいことがあるから」
長男に対して、胸を張ってそう宣言できたといいます。