「次の赤ちゃん、きてくれないねー」と
何気なく娘に言ったのです。
すると、娘はつみ木で遊びながら
「だって、ちーちゃん(娘)だけだったんだもん!」
と言いました。
何のことか分からず
「何がちーちゃんだけだったの?」と聞きました。
すると今度は遊んでいた手を止め、
こちらを向き、ニコッと笑いながら
「おそらで、かみさまが
『ママとパパのところにいきたいひとー?』って、
きくからね、『はーい』って、
ちーちゃんがてをあげたの」と言うではありませんか。
驚きの記憶と複雑な気持ち

「えっ、これってもしかして、
私のお腹に来る前の話のこと?」
と驚きつつ、
私は、娘が突然話し出した産まれる
前の記憶に興味津々でした。
話の続きを急かしたい気持ちを抑えて、
私は穏やかな口調で言いました。
「そうだったんだ。ちーちゃんだけだったんだね」
すると娘は
「うん!みんなで、
おそらからいろんなママをみてたんだよ。
ほかのママのところには、
いっぱいいたの。
でもママのところは、
だれもてをあげなくて、
ちーちゃんがあげたのー」と、
何とも複雑な気持ちにさせてくれるではありませんか。
「ち、ちーちゃん以外、
誰もママのところには
来たくなかったのかな…?」と聞くと
「だからね、ちーちゃんがここにいるの。
ママをひとりじめしてるのー」と、
嬉しそうに抱きついてきたのです。
羽とトンネル型のすべり台

「他に誰も来たがらなかった」という
少しショックな内容に、
娘が貴重な話をしている事を忘れ、
私はしょんぼりとしてしまいました。
しかし
、娘はそんな私に構うことなく、
ニコニコしながら話を進めました。
「てをあげたら、かみさまがいいよーっていって、
せなかをトントンしたの。
そうしたら、
ちーちゃんのせなかに、
はねがはえたんだよ!」
私の反応を気にすることなく、
娘の話は続きます。
「それでね、パタパタとんで、
トンネルみたいなすべりだいにいったの。
まっくらなとこビューンってすべったら、
ママのおなかにきたのー」
私たちの所へ来てくれた娘に感謝

私は、複雑な気持ちのまま
相づちを打っていました。
もしかしたら、
その気持ちが表情に出ていたのかもしれません。
すると、そんな私を見た娘が一言。
「ちーちゃん、あのとき、
てをあげてよかったー。
だいすきなママにあえたもん」
目の前の娘がはちきれそうな
笑顔で私を見上げます。
そのまっすぐでいたいけな瞳を見た私は、
「2人目ができないから何よ。
目の前にこんな愛くるしい娘がいて、
こうして傍にいてくれる。
それで十分じゃない」そう思ったのです。
気が付くと、
私は思いきり娘を抱きしめていました。
胸の内は愛しい娘への想いで溢れ、
私たちの所へ来てくれた感謝の気持ちで
いっぱいになっていました。
その日の夕食は、
娘の大好きなハンバーグになったことは
言うまでもありません。
「ちーちゃん。
ママもちーちゃんに会えて本当に良かった。
私たち家族の元に来てくれて心からうれしいよ!
ありがとう」