過去にもあった「危機」
東京工業大学の丸山茂徳
(まるやま・しげのり)教授らによれば、
地球には過去にも何度か、
海水が大きく減少した時期があったそうです。
たとえば約7億5000万年前には、
海水がマントルに大々的に
注入されたことがあったといいます。
丸山教授らはこれを、
マントルへの海水の「逆流」といっています。
逆流によってマントルに水が入り
海水が減少すると、海面が下がります。
すると陸地が増えて、
それを削剥(さくはく)する河川が成長し、
土砂などの陸上の堆積物が大量に海へもたらされます。
その結果、
陸上にあった有機物が土砂に埋積されて
酸素による分解が妨げられるため、
独立した状態の酸素がどんどん増えていきます。
そのため生物がどんどん大型になっていき、
地球を席巻するまでになったと
丸山教授らは考えています。
なんとなく風が吹けば桶屋が儲かる話のようです。
ただ、
この海水の減少はある時点までで止まったようです。
その原因はやはり、
マグマの活動だったと考えられています。
地下のより深くから大量のマグマが
上がってくることによって、
マントルの温度が上がり、
水は水蒸気となって、
地表に戻っていったとみられています。

しかし、このさき地球の熱源が冷えてしまえば、
もうそのような海の復活が起こることはないでしょう。
海が消えれば雨が降らなくなり、
陸上の水もやがて枯渇していきます。
地球はその表面に水をもたない惑星になっていくのです。
このように、何億年もの遠い先のこととはいえ、
海のある地球の環境は、
決して安泰とはいかないようです。
こうした未来の変化の種を、
これまでの地球の歩みから
読み取ることはできるのでしょうか。
まずは、
地球にどうして海が誕生したのか、
太古の地球に戻ってみていきたいと思います。
なんと、地球にできた最初の海は、
マグマの海だったと考えられているのです。
地球に強くなる三部作!
「水の惑星」46億年の事件史……。
宇宙で唯一知られる「液体の水」をもつ海は、
どのように生まれ、そしてこの先どのように変わっていくのか。
「母なる海」を通して、
46億年の地球進化史を読み解きます。