世界で年間約700万人が
脳卒中で死亡、この24年で
7割も増加した理由とは?
世界で年間約700万人が
脳卒中により死亡、
その数は増加傾向に
気候変動と食生活の悪化によって、
世界の脳卒中の発症率と死亡率が
劇的に上昇していることが、
オークランド工科大学(ニュージーランド)の
Valery Feigin氏らのグループによる
研究で示された。
2021年には世界で約1200万人が
脳卒中を発症し、
1990年から約70%増加していたことが
明らかになったという。詳細は、
「The Lancet Neurology」
10月号に掲載された。
本研究によると、2021年には、
脳卒中の既往歴がある人の数は9380万人、
脳卒中の新規発症者数は1190万人、
脳卒中による死者数は730万人であり、
世界の死因としては、
心筋梗塞、
新型コロナウイルス感染症に次いで
第3位であったという。
専門家は、
脳卒中のほとんどは
予防可能だとの見方を示す。
論文の共著者の1人である米ワシントン大学の
保健指標評価研究所(IHME)の
Catherine Johnson氏は、
「脳卒中の84%は23の修正可能な
リスク因子に関連しており、
次世代の脳卒中リスクの状況を変える
大きなチャンスはある」と述べている。
脳卒中のリスク因子は、
大気汚染(気候変動によって悪化)、
過体重、高血圧、喫煙、運動不足などであり、
研究グループは、これらのリスク因子は全て、
低減またはコントロール可能であると指摘している。
脳卒中に関連する死亡者数は
何百万人にも上る一方で、
脳卒中を起こした後に重度の
障害が残る患者も少なくない。
今回の研究からは、
脳卒中によって失われた健康寿命の年数
(障害調整生存年;DALY)は、
1990年から2021年にかけて
32.2%増加していたことも明らかになった。
なぜ脳卒中が増加した?
では、なぜ脳卒中がここまで増加したのだろうか。
研究グループの分析によると、
多くの脳卒中のリスク因子に人々が
さらされる頻度が上昇し続けていることが
原因である可能性があるという。
本研究では、
1990年から2021年までの間に、
高BMI、気温の上昇、加糖飲料の摂取、運動不足、
収縮期血圧高値、
ω-6多価不飽和脂肪酸が少ない食事に
関連してDALYが大幅に増加したことが示された
(増加の幅は同順で、
8.2%、72.4%、23.4%、11.3%。6.7%、5.3%)。
Johnson氏らは、気温の上昇は、
もう1つの脳卒中のリスク因子である
大気汚染の悪化を意味していると説明する。
同氏らは、
「暑くてスモッグの多い日が脳卒中
リスクに与える影響を最も強く受けるのは
貧しい国である可能性が高く、
その影響は気候変動によってさらに悪化し
得る」と指摘する。
実際、出血性脳卒中のリスクに関しては、
現在、汚染された空気を吸い込むことは、
喫煙と同程度のリスクをもたらすと
考えられているという。
脳卒中全体に占める出血性脳卒中の
割合は約15%で、
虚血性脳卒中(脳梗塞)と比べると
大幅に低いにもかかわらず、
世界のあらゆる脳卒中に関連した死亡や
障害の5割が出血性脳卒中に起因するという。
「脳卒中に関連した健康被害は、
アジアやサハラ以南のアフリカ
(サブサハラ・アフリカ)で特に大きい。
こうした状況は、
管理されていないリスク因子、
特にコントロール不良の高血圧や、
若年成人における肥満や2型糖尿病の
増加といった負担の増大と、
これらの地域における脳卒中の
予防およびケアサービスの不足によって
生まれている」とJohnson氏は指摘する。
しかし、
こうした状況を変えることは可能であると
Johnson氏は主張する。
例えば、
大気汚染は気温上昇に密接に関連するため、
「緊急の気候変動対策と大気汚染を減らす
取り組みの重要性は極めて高い」と言う。
さらに同氏は、
「高血糖や加糖飲料の多い食事などの
リスク因子にさらされる機会が増えているため、
肥満やメタボリックシンドロームに
照準を合わせた介入が急務である」と述べている。
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/
PIIS1474-4422(24)00369-7/abstract