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2024/4/7

脳が鮮明に見える! 世界最強の磁束密度で 脳をスキャンするMRI

 
 
 
 
 

脳が鮮明に見える!

世界最強の磁束密度で

脳をスキャンするMRI「イズールト」

 
 

 

世界で最も強力なMRIスキャナー、

通称「イズールト(Iseult)」が開発され、

初めて人体での臨床試験が実施されました。

 

 

イズールトはフランス原子力・代替エネルギー庁

(CEA)がドイツの技術者たちと協力し、

20年の歳月をかけて完成させた最新のMRIです。

 

 

これは通常3T(テスラ)のMRIの磁束密度を、

11.7Tまで出力を上げたもので、

これにより一般に使用されている

MRIの10倍以上の高解像度で

脳をスキャンすることができるといいます。

 

 

一体どのくらいの違いがあるのか、

実際のスキャン画像をもとに見比べてみましょう。

 

 
 
 
 

従来のMRIの10倍以上の

パワーを誇る「イズールト」

 
 

MRI(核磁気共鳴画像法)は、

磁気の力を使って体内の臓器や血管の

状態を撮影する医療機器です。

 

 

MRIが作り出す磁場は

「テスラ(T)」という単位で表され、

その数値が大きいほど、

短いスキャン時間で質の高い画像を

得ることができます。

 

 

現在の臨床現場で使用されている

MRIはだいたい0.2〜3.0テスラです。

 

 

しかしCEAの研究チームが開発したイズールトは、

これらを遥かに上回る11.7テスラという

驚異的なパワーを誇ります。

 

 

これは一般的な病院で使われている

MRIの10倍以上とのことです。

 

 

イズールトは全長と高さがそれぞれ

約5メートルの円筒形で、

中には132トンの磁石が内蔵されています。

 

 

 

新型MRI「イズールト」を使用する様子
 
 
 
 
 

 
の構造を細部にわたって理解すること、
 
それから薬剤投与などの医療タスクを行ったときに
 
脳のどの部分がどのように活性化するかを
 
これまで以上の解像度で理解することです。
 
 
 
サンドル・ヴィグノー(Alexandre Vignaud)氏は
 
「イズールトを使えば、
 
 
大脳皮質に栄養を送る微小な血管や、
 
これまでほとんど見えなかった
 
小脳の細部まで見ることができる」 と話します。
 
 
 

また同プロジェクトの科学ディレクターである

ニコラス・ブーラン(Nicolas Boulant)氏は

「11.7テスラの磁力を利用すれば、

例えば本を読んだり暗算をするときに

脳がどんな動きをしているかなど、

脳の構造と認知機能の関係も

より鮮明に調べることができる」といいます。

 

 

同チームは2021年に初めてイズールトを

実験的に使用しましたが、

そのときのスキャン対象は「カボチャ」でした。

 

 

しかし最近になって保健当局から

人体での利用許可が下りたため、

ついに人を対象とした臨床試験が実施されました。

 

 

ではイズールトによるMRIスキャンでは、

従来と比べてどれほど鮮明な

画像が得られたのでしょうか?

 

 
 
従来のスキャン画像と比較した結果…
 
 

研究チームはここ数カ月間で約20人の

健康なボランティアを対象にイズールトを

用いた活動のスキャンを実施。

 

 

その結果、

これまでに到達したことのないレベルでの

鮮明な脳画像が得られました。

 

 

こちらがその画像で、

左から3テスラ・7テスラのMRI、

そして11.7テスラのイズールトを使った脳画像で、

スキャン時間はどれも4分間です。

 

 

 

左から3テスラ・7テスラ・11.7テスラのMRIで撮影した脳画像(スキャン時間は4分間で統一)
 
 
 
 
 

 
一般に使用されている3テスラのものに比べて
 
遙かに鮮明度が増していることがわかります。
 
 
 

研究者によると、

3テスラでイズールトと同じ精度の

画像を得ようと思えば、

患者を数時間はMRIの中に

閉じ込めておかなければならないという。

 

 

しかしイズールトであれば、

わずか数分でかつてない解像度での

脳画像が得られ、

病気の検出や治療が大幅に

向上すると期待できます。

 

 

これはMRIのような圧迫感のある

閉所を苦手とする患者さんには嬉しい進歩です。

 

 

 

病気の解明にも

 
 

研究者らはこれと別に、

パーキンソン病やアルツハイマー病などの

神経変性疾患、うつ病や統合失調症などの

精神疾患といった、

いまだにメカニズムがよく分かっていない

病気の解明にも役立つと考えています。

 

 

例えば、

アルツハイマー病には脳の特定の領域である

「海馬」が関与しているとされますが、

具体的にどのように影響を

及ぼしているのかは定かでありません。

 

 

そこでアルツハイマー患者の海馬を

イズールトで調べることで、

健常者とどのような動きの違いが

あるかを見つけられると期待できます。

 

 

CEAの研究者であるアン=イザベル・エチエンヴル

(Anne-Isabelle Etienvre)氏は

 

治療の難しい疾患を詳しく理解することができれば、

 

早期の発見とより効果的な治療が

行えるようになるでしょう」と述べました。

 

 

 

イズールトで撮影した脳画像

 

 

ただ、人体での安全性の確認や

品質の改善をする必要があるため、

実際の患者に使用されるまでには

あと数年かかるといいます。

 

 

チームは今後数カ月のうちに新たな

ボランティアを募って、

イズールトを用いた脳スキャンを

実施する予定です。

 

 

 

 
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