<参考:笹井恵里子>
国立環境研究所環境リスク・
健康領域の谷口優主任研究員
1喧嘩はするな、
2意地悪はするな、
3過去をくよくよするな、
4先を見通して暮らせよ、
5困っている人を助けよ、
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2025/12/6
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歩き方を見れば一発でわかる… 「脳梗塞・脳萎縮・認知症」 リスクが高い人の決定的な特徴 |
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歩き方を見れば一発でわかる…「脳梗塞・脳萎縮・認知症」リスクが高い人の決定的な特徴
前回は全身の不調がわかる 「足の特徴」をお伝えした。
足を見れば、心不全や腎不全、 動脈硬化がわかるという菊池恭太医師 (下北沢病院)の言葉に 驚いた人も多かったのではないか。
今回は「歩き方」に現れる “脳の異変”について取り上げる。
国立環境研究所環境リスク・ 健康領域の谷口優主任研究員が 自身の研究を含め、 さまざまな報告を紹介してくれた。
あなたの歩き方は大丈夫だろうか。
歩き方には「脳の異変」が現れる歩くのが遅い人は脳卒中リスクが44%高い歩行速度が遅い人は、 速い速度の群と比べて脳卒中リスクが44%高い
国立環境研究所環境リスク・健 康領域の谷口優主任研究員がそんな 衝撃的な論文を紹介する。 「これは7件の研究データを統合し、 約14万人の研究対象者と脳卒中を 発症した約2000例から結論を導き出した メタ解析の報告ですが、
歩行速度が最も遅い群 (中央値1.6km/h)と比較して、
最も速い群は(中央値5.6km/h)は、 脳卒中リスクが44%低下しています。
また歩行速度が1km/h増す=速くなることで 脳卒中のリスクが約13%減少するとも 報告されています」
研究報告に掲載されている図を見ても、 「歩行スピード」と「脳卒中の発症リスク」に 直線的な相関関係があるのがわかる。
脳卒中とは脳が障害を受ける病気のことで、
代表的なものに脳の血管に血栓が詰まる「脳梗塞」や、 脳血管が破れる「脳出血」がある。
なぜこのような現象が起きるのだろうか。
「歩き方には脳の異変が現れるのです」と、 谷口研究員が続ける。
「脳には太い血管から細い血管まであり、 例えば太い血管に血栓が詰まれば脳梗塞となって、
深刻な事態につながりかねません。
けれども裏を返すとそれは、 “すぐわかるサイン”。一方で、
細い血管に脳梗塞があっても、 日常生活に影響しないことも少なくありません。
実は歩幅が狭い人、 小刻み歩行の人には、
すでに脳梗塞が生じているリスクが 高いことを示す報告もあるのです」
歩くスピードは「歩幅」と「歩調(テンポ)」の 掛け算で決まる。
つまり脳梗塞があることによって歩幅が狭くなり、 歩くスピードが遅くなる(歩き方に現れている) 可能性が高いということだ。 歩幅が狭い人は脳が萎縮している可能性歩幅の狭さは、 「脳卒中発症のリスク」だけでなく 「脳萎縮」が生じている可能性もあるという。
「脳の表面をふち取るような神経細胞の層を 『灰白質』と呼びます。
白黒のX線写真で灰色に映る部分ですね。
大脳の表面部分、 『大脳皮質』にはいろいろな領野があるのですが、
運動の司令塔である『大脳皮質運動野』に 萎縮が生じると歩幅が狭くなることが わかっているのです。
つまり歩幅が狭くなる、 歩行速度が遅い人では、 脳が萎縮している可能性があると考えられます」
歩幅の狭い人は約3倍も認知機能が低下しやすいさらに認知症リスクにも関係する。
谷口研究員は国内で65歳以上の高齢者、 600人以上を対象に「歩幅」を調べ、 最長4年にわたり認知機能の変化を追跡調査した。
その結果、 「歩幅の狭い人は広い人に比べて 約3倍も認知機能が低下しやすい」 という結果が得られたのだ
「歩くスピードは昔から研究され、 特に高齢者の場合は 『歩くスピードが速い人は転倒しにくく余命が長い』 ことがすでに示されていました。
ですがなぜ歩くスピードが健康状態と 関係するのかはよくわかっていませんでした。
歩くスピードは歩幅と歩調の掛け算で決まりますから、 私たちは2つの要素を分けて調査を行ったのです。
当時は、検査者が2人1組になり、 対象者の足の動きを観察しながら 距離と歩数を計測するという原始的な方法でした」
8メートルを10歩で歩けば、 1歩80センチの歩幅で歩いていることがわかる。
谷口研究員らは同時に詳細な 認知機能検査を実施した。
その後も毎年同様に検査を行ったという。
「そして歩幅や歩調のデータと 認知機能の変化の関係を調べた結果、 歩幅が広い人に比べ歩幅が狭い人の 認知機能が低下するリスクがとても高かったのです。
つまり脳の働きと関係するのは『歩幅』でした。
その後の研究で、 歩幅の狭さは認知症の発症にも深く 関係していることがわかっています
「歩幅が安定しない人」も要注意またしばらくして実験装置を購入し、 一歩一歩の計測ができるようになった。
「単純に歩幅が広いか狭いかということだけでなく、 一歩一歩のばらつきが大きいことが 認知機能との関係が強かったのです。
例えば平均65センチの歩幅でも、 突然55センチになったり、 70センチになったりと、 “歩幅が安定しない人”は 脳内もしくは脳と足の間の神経回路のどこかで、 情報のやりとりを阻害する 問題が生じていると考えられます」
さて自分の歩き方に問題があるかどうか、 どのようにわかるのか。
「横断歩道を歩くスピード」で自分の歩行速度を簡単チェック簡単なチェックは「歩くスピード」である。 歩行スピードが遅いかどうかは、 「1秒間で何メートル進めるか」で 考えるとわかりやすい。
前期高齢者(男性)の平均値は、 1秒間に約1.1~1.5メートル進む。
信号機の「青」は、 点滅するまでの間に毎秒約1メートルの速度で 横断歩道を渡りきれるような基準だ
(実際には交通量などを加味して 時間が設定されている)。
そのため時間内に渡りきれなければ 歩行スピードは遅いと考えられるだろう。
「または同世代、 同性の人と一緒に歩き、 自分ではいつもと同じリズムで歩いているのに 遅れてしまう、
いつもの道を歩くのに時間がかかるように なったなどの場合、 歩幅が狭くなっているかもしれません」
歩幅の目標値は65センチ横断歩道の白線でチェックできる歩くスピードの決め手になる歩幅について、 「目標値は65センチ」と谷口研究員。
歩幅とは、 一方の足のつま先から、 もう一方の足のつま先までを指す。
国立環境研究所環境リスク・ 健康領域の谷口優主任研究員。 歩幅の目標値は65センチ。 理想的な歩き方として、 「今の歩幅にプラス5センチ」を 谷口研究員は提案する 「横断歩道の白線がおよそ45センチなので、 つま先を白線に合わせて次の一歩で 超えられればOKです。
足の大きさが25センチなら、 白線の幅に足の大きさを加えた 長さである歩幅は70センチとなります。
また、 たたんだ状態の新聞の横サイズが41センチなので、 これも軽々超えられるなら、 歩幅が65センチ以上はありますね」
もちろん10メートル程度の距離を歩いて、 「歩数」で割っても平均歩幅が出る。
ここで「身長」は関係しないのか? と疑問に思う人がいるかもしれない。
もちろん身長が高い、 足が長ければ歩幅は広くなりやすい。
けれども大事なことは「意識すれば歩幅が 広げられるかどうか」 「歩幅が安定しているかどうか」なのだという。
「今の歩幅にプラス5センチ」が理想的な歩き方「歩幅には脳の異変が現れる。
逆に言うと意識して歩幅を広くできるなら、 それは“脳が正常に機能できている証し”です」
理想的な歩き方として、 「今の歩幅にプラス5センチ」を 谷口研究員は提案する。
「人にはたくさんの『予測因子』 (疾患発生の危険を高める 可能性がある要素のこと)があります。
例えば男性・女性ということも、 ある病気については予測因子になります。
『年齢』も若い人に比べて高齢者のほうが 病気を発症するリスクが高くなる。
多くの予測因子がありますが、 年齢や性別、教育年数、 遺伝子などは変えられません」
「変えられるものは『生活習慣全般』で、 そのなかで『体の動き』は とても影響が大きいのです。
体の動きには“その人の今後”を 暗示するいろいろなメッセージがある。
特に歩き方には脳の異変が現れて、 歩幅が狭い人は 認知症の発症リスクが高まります。
そのメカニズムはまだ完全には 解明されていませんが、
わずか5センチでも歩幅を変えることで 認知症を予防する一歩になると期待しています」
「広い歩幅で生活すること」を心がけただけで認知機能が維持・向上谷口研究員は2022年、 NHKの番組協力によって、 脳の働きに不安がある 60~80代の方を12人集め、
認知機能検査を行い、 歩き方をアドバイスし、 「広い歩幅で生活することを心がける」という 緩やかな実験を行った。
その1カ月後、 なんと12人中8人の認知機能が維持・ 向上したという結果だったという。
「残る4人の認知機能に目立った変化はなく、 大きく悪化した人は1人もいませんでした。
歩幅を広くすれば、 認知機能を維持・向上できる 可能性が高いということです」
「歩くこと」そのものも、 脳に刺激を与えている。
歩く動作は、歩いた道を覚える「記憶力」、 自動車が近づいていないかなど 周辺に気を配る「注意力」、
自分がどの方向に進んでいるかを把握する 「視空間認知」など、 複数の機能が必要になるからだ。
だが、歩き慣れた道をトボトボ歩くのでは 脳への刺激は少ないだろう。
いつもより歩幅を広げ、 これまで歩いたことのない道を楽しみたい。
心不全、腎不全、肝臓や甲状腺の病の 危険があるときに「足に現れる異変」、
全身の動脈硬化が進んだときに 「足に現れる異変」を 実際の写真とともに解説します。
また、 糖尿病を患う人に起こりやすい 「足の異変」とは。 |
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