満月は地震注意?
改めて注目したい
大地震と月との関係
この連載では、独立行政法人理化学研究所、
今回は満月と地震について。
第23回「満月と地震」のはなし
一方で、
地球上で、
特に日本に住んでいると
意識せざるを得ない
自然現象の一つに地震があります。
ですが、
実は巨大地震が宇宙からの影響を
受けている可能性があるというのは、
あまり知られていない気がします。
南海トラフ地震や、
首都直下型地震の発生リスクが
声高に叫ばれる中で、
知っておきたい月の満ち欠けと
巨大地震の関係性について
今回は整理していきます。
まだ記憶に新しい人が多いと思いますが、
2024年8月8日に起きた宮崎県での
震度6弱の地震を受け、
南海トラフ地震に対する発生確率が
通常より高まっているとして、
「南海トラフ地震臨時情報
(巨大地震注意)」が出され、
注意が呼びかけられました。
私自身、
ハザードマップで赤色に表示されている
場所に住んでいます。
災害に対する備えをしながら、
この連載でも紹介した地震の発生頻度と
規模の関係性のデータを考えると、
数倍の発生確率の上昇を、
どう捉えるべきか考えさせられました。
巨大地震が発生しやすい条件について、
かつて面白い研究結果が
Natureの姉妹雑誌
「Nature Geoscience」に
発表されたことがあります。
それは大潮、
つまり「月の満ち欠け」と地震の関係です。
なんと、
大潮となる満月と新月のタイミングでは
巨大地震が発生しやすくなるというのです。
その結果、
2004年のスマトラ沖地震や、
私たち日本人にとって忘れられない
2011年の東日本大震災などを含む
マグニチュード8.2以上の巨大地震12例の
うち9例が大潮での出来事だったそうです。
逆に、
潮汐力と小さな規模の地震との間には
明らかな相関は見られなかったといいます。
大潮による潮位の変化や、
そもそもの潮汐力による地殻の
変動による影響が、
これらの地震発生に対して関わりが
あるのではないかと考えられているようです。
こんな話を聞くと、
満月や新月のタイミングは少し
ソワソワしてしまいます。
実は8月、南海トラフ地震への警戒が
強まっている中で、
月がパワフルな影響を地球に
与えている時期がありました。
8月20日は満月でした。
ただ、これは単なる満月ではなく、
「スーパームーン」と呼ばれるものです。
月は地球の周りを緩やかな
楕円軌道で回っているのですが、
その軌道上の、
月と地球の距離が近くなる
タイミングでの満月です。
月から受ける潮汐力の強さは、
かかる向きと距離が重要な要素になりますが、
その潮汐力が最も高まっている
タイミングだったわけです。
NASAのカメラがとらえた月が地球を横切る様子
南海トラフ地震への警戒度が強まっていた
タイミングでのこのスーパームーンに、
実は個人的には少しヒヤヒヤしていていたのですが、
ひとまず地震は起こらなかったので、
安堵しました。
しかし、このようなタイミングを迎えると、
私たちが地球という小さい世界で
生きているだけでなく、
宇宙の一部なのだと実感できます。
とはいえ、
月の満ち欠けと地震の関係性は、
あくまで“可能性”の示唆であることは
しっかりと把握しておきたい点です。
地震の正確な発生予測は非常に
困難だと言われています。
今後も時間をかけて専門家が研究と
議論を重ねて、
より確かなデータとして
打ち出す必要があります。
「満月だから地震が起きる」と
一側面だけで物事を捉えて、
過度に不安になったり、
煽ったりすることはないようにしましょう。