20億5000万年前から生き延びた 生物を発見!?  研究の正確な内容と意義を解説!


2024/8/17

20億5000万年前から生き延びた 生物を発見!?  研究の正確な内容と意義を解説!

 
 
 
 
 
 
 

20億5000万年前から生き延びた

生物を発見!? 

研究の正確な内容と意義を解説!

 

 

 

 

20億5000万年前の生物細胞 サムネ

 

 

 

今回の解説の主題は、

20億5000万年前から現代まで

生き延びたかもしれない、

 

起源がとんでもなく古い可能性のある

生物の細胞を発見した、というお話だよ!

 

 

化石のような生物の痕跡でさえ

滅多なことでは見つからない時代なのに、

 

まして生きた細胞があったとした場合、

普通ならば考えられない、

 

古生物のDNAを分析できる

という可能性があるということになるよ。

 

 

 

これは“タイムマシンで古い時代まで行ってきて、

その時代にいた生物を直接採集してきた”

にかなり近い成果だからこそ、

とても注目される研究だよ!

 

 

一方で、

この研究は厳密には何を言っているのか、

という部分は分かりにくいところもあるので、

そこも含めて解説するよ。

 

 

 

20億5000万年前から現代まで

生き延びた生物を発見!?

 
 
 
 
ブッシュフェルト複合岩体の国際陸上科学掘削計画

 

図1: ブッシュフェルト複合岩体とは、

北海道の半分くらいという超巨大な岩石の塊で、

20億5000万年前にマントルから湧き上がった

マグマが固まってできたと考えられているよ。

 

今回の研究は、

初の大規模掘削プロジェクトの一環として行われたよ。 

 

 

今回の研究のスゴさを語る前に、

まずはどんな研究が行われたのかを解説するね。

 

今回の研究は国際共同研究プロジェクト

「ICDP (国際陸上科学掘削計画)」で

行われた科学調査の中で行われたものだよ。

 

 

今回の研究は、ICDPの下でいくつか

行われている掘削の1つ、

 

南アフリカ共和国の

ブッシュフェルト複合岩体ふくごうがんたい

(BIC; Bushveld Igneous Complex)」

を掘削するプロジェクトで採集された

コアサンプルを元に研究を行っているよ。

 

 

ブッシュフェルト複合岩体と言ってもピンとこないかもだけど、

ここは世界最大の白金族元素<sup>[注1]</sup>が眠る場所で、

自動車・電子部品・宝飾品などで

大量の白金族元素を使っている私たちからすれば、

決して無縁な場所じゃないんだよね。

 

 

 

地上ではレアな元素が大量にあるのは、

ブッシュフェルト複合岩体は元々、

地球の奥深くにあるマントルから湧き上がってきた

マグマに由来するからなんだよね。

 

マグマが固まったのは、

なんと20億5000万年も前のことだよ!

 

 

しかも、ブッシュフェルト複合岩体はメチャクチャデカい!

 

東西480km×南北240kmと北海道の半分くらいの面積で、

厚さも8kmと超分厚いよ!

 

古さと大規模さの両面で、

ここは元からスゴく注目されていたのよね。

 

 

だから今回の国際研究で掘削が行われるのは、

ある意味で当然と言えるかもね。

 

今回はマルーラ鉱山 (Marula) で

最大2.5kmも掘るという大深度掘削を計画してて、

 

この記事を書いている時点で

深度686mまで掘り進められているよ。

 

 

 

さて今回、

東京大学の鈴木庸平氏を筆頭著者とする研究チームは、

掘削計画の初期に取り出された、

 

深度14.78m地点のコアサンプルを対象に分析を行ったよ。

 

探したのは別に鉱物とかじゃなく、なんと生物だよ!

 

 

え?20億年前に固まった、

隙間のほとんどない岩石に生物なんているぅ?

という反応はありそうね。

 

これは後で説明するけど、

世界中の似たような場所に生物が見つかっているので、

この可能性は無きにしも非ずだよ!

 

 

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前の話で、
 
さすがに20億5000万年前から一度も
 
変化していないであろうブッシュフェルト複合岩体に
 
いるかどうかは正直わからん、
 
って感じだったんだよね。
 
 
 
 
</ins>

 

20.5億年前の生物の発見の概説

 

図2: 今回の研究では、

20億5000万年前の岩石の脈に、

細胞を作ると思われる有機物、

およびDNAに結合すると蛍光する物質で

光るものが見つかったよ。

 

鈴木氏らは、

これをこの場所で長きにわたって生きてきた

生物の細胞であると考えているよ!

 

 

今回の研究ではまず、

「O-PTIR分光法」という、サンプルを変質させない、

光を使う方法で分析したよ。

 

すると、岩石を構成する鉱物の他に、

生物の細胞に含まれる化学結合<sup>[注2]</sup>

一致するような分析結果が得られたんだよね!

 

 

そこで、次に「サイバーグリーン (SYBR Green I)」

という物質の溶液を塗ってみたよ。

これはDNA二重螺旋に結合しやすい性質を持ち、

 

結合したものに紫外線を当てると

緑色に光るので、

そこにDNAがありそうだと判断できるよ。

 

 

 

 

そしてやってみたところ、

まさに岩石の脈の一部が

緑色の蛍光を示したんだよね!

 

O-PTIRによる有機物の検出も併せると、

 

これは20億5000万年前の岩石の中で、

現代まで生き続けてきた微生物を見つけたらしい

となってくるわけ!

 

 

岩石の中で何億年間も

生物は生き続けられる!

 
 

さて、ここまで聞いてまず真っ先に思い浮かぶ疑問は

そんな環境に20億5000万年間も生物が

生きられるのか」だと思うんだよね。

 

ただこれに関しては、

近年の研究で段々常識が変わってきた感じだよ。

 

 

従来知られていた生物と言えば、

酸素を呼吸し、光合成を基盤とする生態系にいたよ。

 

植物を食べる動物がいて、

その動物を食べる動物がいて……

というやつだね。

 

これは光の届かない深海であっても、

浅海とのリンクで繋がってきたよ。

 

ところが地球の探索が進むと、

酸素もなければ光も届かない環境で生きる

生物が見つかってきたんだよね!

 

中には地下数kmの岩石の中のわずかな

隙間に棲むようなものも見つかっていって、

今では世界中に発見例があるよ。

 

 

 

地下の岩石の体積は、

陸上や海と比べてずっと大きいので、

こういう岩石の中にする生物の総重量は、

 

陸上や海の生物を全て足したより多いんじゃないか、

なんて予測すらあるくらい、

 

今では豊かなことが分かっているんだよね!

 

だから、

こういう地下生物圏の探査を行うことは、

未知の生物を見つけることのみならず、

 

地球の生物の多数派を調べることにも繋がるから、

非常に重要な立ち位置にある研究となるんだよね。

 

 

蛇紋岩化反応の概説

 

図3: 蛇紋岩化反応とは、

岩石に含まれる鉱物と水とが反応し、

水素を生成する反応なんだよね。

 

水素をエネルギー源として生きる生物は見つかっていること、

今回の岩石は蛇紋岩化反応で生じる

粘土鉱物の近くで見つかっていることから、

 

今回発見された生物も蛇紋岩化反応で生じた

水素で生きている可能性が高いと考えられるよ。

 

 

そして、こういう岩石の隙間に生息する生物は、

岩石を構成する鉱物と水との反応である

蛇紋岩化反応じゃもんがんかはんのう」で

生じるわずかな水素を使い、

 

水素の酸化反応をエネルギー源として

生命活動に利用しているんだよね。

 

 

実際、今回生物が見つかった部分では、

蛇紋岩化反応の結果として生じる粘土鉱物<sup>[注3]</sup>

多く見つかっているんだよね。

 

今回見つかった生物も、

おそらくは蛇紋岩化反応で水から生じた

水素を糧に生きていた、と考察できるよ。

 

 

わずかな隙間のわずかな物質でさえ、

数百万年くらいは余裕で生きるのに十分な物質が

生じることは既に判明しているので、

 

ずっと長い何億年レベルであっても、

閉鎖環境で生存し続けることは不可能ではない、

と考えられるよ。

 

 

これほど閉鎖的な環境でも生き続けることができる、

ということで、

じゃあ全く変化のない古い岩石の中にも生物は

生き残っているのだろうか?

というのが次の疑問になってくるわけだね。

 

最近、これが積極的に研究されているよ。

 

 

長期間生存し続けた生物

 

 

表1: 非常に古いサンプルから生きた状態の

生物を発見したという主張の一覧。 

 

こんな感じで研究を続けた結果、

2019年には海底下2kmにある2000万年前の

コアサンプルから、

 

2020年には1億150万年前に堆積した

海底の地層から、

それぞれ生物を見つけてるんだよね。

 

 

しかし今回は20億5000万年前!

文字通り桁違いに古いものだよ!

これは上記の例はもちろんのこと、

 

より古い例だと主張する、

しかし正しくないかもしれない不確実な報告すらも

上回っているよ。

 

とんでもないね!

 

 

 

「今回の発見は本当?」という

疑問に答えるために気を付けたこと

 
 
今回の発見が汚染ではない根拠

 

 

図4: 今回の発見は、

別の時代の生物による汚染であるという

主張が出てくるのはある意味で当然なんだよね。

 

今回の研究では色んな根拠から汚染

ではないことを主張しているよ。 

 

 

次に思い浮かぶ疑問は

この生物は本当に20億5000万年前から存在するのか?

という点だね。

 

これは研究の主張の根幹でもあるし、

多くの人がツッコミを入れることが想定されるよ。

 

 

もしもこの研究が間違っていると仮定した場合、

考えられるのは「サンプルが現代の生物に汚染されていた」

か「岩石の割れ目などから、

より新しい時代の生物が入り込んでいた」

という可能性のどちらかだね。

 

 

 

もちろん、

このようなツッコミが入ることは鈴木氏らも想定済みなこと。

 

だから色んな方法や対策を事前に実施することで、

でこういった間違いが起こる

可能性を極力排除しているんだよね。

 

 

まず、ブッシュフェルト複合岩体を

選んだこと自体が重要だよ。

 

これが20億5000万年前に固まった

岩石と説明したけど、

 

これは単純な古さだけでなく、

固まって以降は一度も変質が加わっていない

ことを意味するんだよね。

 

 

ブッシュフェルト複合岩体の

安定性はかなり高いことが分かっているので、

 

20億5000万年という長い時間を考慮しても、

おそらくは生物が入り込むような

隙間が空いた可能性は低い、

と考えられるんだよね。

 

 

 

次に、現代の生物で汚染されている可能性。

 

これは一番考えられるケースで、

特にボーリングする際に注入する冷却用の水には、

 

どうしても微生物が含まれているので、

それが付着する可能性が十分考えられるよ。

 

 

そこで鈴木氏らは、

紫外線を当てると青色に光る蛍光ビーズを

水の中に入れたよ。

 

蛍光ビーズの大きさは

0.25µmから0.45µmとめっちゃ小さいけど、

これはまさに微生物の細胞と同じくらいの大きさだよ。

 

 

もしコアサンプルの測りたい部分に

蛍光が見られた場合、

それは微生物と同じ大きさの

ビーズが入り込んでいるので、

実質的に微生物が入り込んだのと

同じであるとみなすことができるわけだよね?

 

 

なので裏を返せば、

内部に蛍光ビーズが染み込んでいないサンプルは、

内部が現代の微生物に汚染されずに

保たれている可能性が高い

と見なすことができるわけだよ。

 

 

これに加えて今回は、

掘り出されたコアサンプルは直ちにきれいな水で洗浄し、

ガストーチで表面を高温で炙り、

 

その後滅菌された袋に詰めた後4℃の低温で保管、

ついでに酸素吸着材で低酸素環境を保ったよ。

 

これは、

いくら内部が汚染されていないサンプルであったとしても、

どうしても防ぐことができない表面の汚染状態を

放っておくことはできないという、

念には念を入れた措置だということだね。

 

 

さらにサンプルを顕微鏡観察した結果としては、

生物が付着していた場所には、

蛇紋岩化反応によって生じた

石鹸石せっけんせき (Saponite) を

主体とする粘土鉱物が隙間なく密集していたんだよね。

 

 

粘土鉱物が緻密に存在することは、

外からの汚染の可能性を低くすると共に、

 

中に閉じ込められていた生物も

外に出られない封印となっていたで

あろうことが予測されるよ。

 

 

また、

今回見つかった生物の見た目の形は、

ボーリングで使った水に含まれる微生物とは

異なるかたちをしていたよ。

 

これ自体は、

他の証拠と比べるとあまり強い証拠とは言えないけど、

副次的な要素にはなるよね。

 

 

こんな感じで複数の観点から、

今回見つかった生物の細胞は、

今回の掘削で生じた汚染や、

もっと新しい時代に入り込んだ生物ではなく、

20億5000万年前の岩石の固化の直後から

存在していた可能性がある、

と考えられるんだよね!

 

 

“タイムマシンで古代の生物を取ってきた”

に匹敵する発見!

 
 
 
20.5億年前の生物の発見の意義

 

 

図5: 今回の発見に関する主張が正しい場合、

かなり古い時代の生物が、

その特徴を維持したまま現代まで

生き残った可能性があるんだよね。

 

これはタイムマシンで過去に行って

採集したようなものだからこそ、

今回の発見が驚かれるんだよね。

 

 

ではなぜ、

20億5000万年前の生物が見つかると嬉しいのか?

これは生物全体の進化を探る上で、

とても重要な発見になり得るからだよ!

 

まず20億5000万年前は何かといえば、

これは古原生代こげんせいだいと

呼ばれる時代区分になるよ。

 

 

45億4000万年前に作られた地球に、

いつ頃生命が誕生したかは定かではないけど、

生物の化石と思われるものや生物が残した物質の痕跡、

ゲノムの分析によって、

 

40億年前より以前のどこかで

誕生した可能性があるよ<sup>[注4]</sup>

 

 

この時誕生したのは、

真正細菌しんせいさいきんや古細菌こさいきんのように

細胞に核を持たない「原核生物げんかくせいぶつ」

であると考えられるよ。

 

一方で私たちのように細胞に核を持つ

「真核生物しんかくせいぶつ」は、

 

遅くとも16億3500万年前に

誕生していたみたいなんだよね。

 

 

真核生物の起源もまた大きな謎なんだけど、

最近の研究では、

古細菌の一部が別の古細菌を取り込むことで

誕生したのではないか?

という説があるんだよね。

 

そしてその理由が、

地球に増えていった酸素への

対応だという説があるよ。

 

 

地球にシアノバクテリアという、

光合成をする真正細菌が出現した後、

光合成は酸素を作るため、

 

地球は24億6000万年前から

20億6000万年前にかけて、

 

徐々に酸素のない環境から、

酸素に満ちた環境へと移行したよ。

 

 

ところがこれによって、

酸素のない環境で独自の生態を作っていた

古細菌は困っちゃった。

 

何しろ酸素はいらないどころか有毒だったからね!

 

そこで、

 

酸素に対応可能な別の古細菌と

共生関係を築き、

酸素をどうにかしようとしたよ。

 

 

やがて共生ではまどろっこしいので、

細胞自体が合体してもっと酸素に適応しようとした……

 

これが、

真核生物の出現の大雑把な説明だよ。

 

とにかく酸素の増大が、

真核生物の出現と関係がありそうだとなるわけだね。

 

 

 

ここで気になるのは今回の生物の年代。

 

20億5000万年前といえば、

ちょうど大酸化イベントの終盤。

 

もしかすると化石として見つかっていないだけで、

 

原始的な真核生物が出現し始めているかも

しれない時代と重なっているよ。

 

 

つまり今回の生物が、

20億5000万年前からずっと

岩石の中にいた場合、

 

真核生物が出現する前か後かに

生息していた、

 

原始的な生物の特徴を

保持している可能性がある

 

とかなり夢のある話に繋がるんだよね!

 

 

もちろん、

細胞分裂を繰り返しながら暮らしているうちに、

進化して元の特徴を失う可能性もあるよ。

 

ただ、今回とは別の研究で、

 

ある真正細菌<sup>[注5]</sup>は5500万年から

1億6500万年程度の間、

ほとんど進化していないことが判明しているよ。

 

 

利用できる資源の乏しさから

細胞分裂もものすごく遅い可能性が

あることを考慮すると、

 

20億5000万年の長きにわたってもなお、

進化が最小限で済むことで、

 

ある程度原始的な特徴を

残していることに希望は持てるよ。

 

 

何より、

今回はDNAを光らせるサイバーグリーンで

光っていることから、

生きた細胞が存在する、

 

つまりDNAの分析で原始的な特徴が

あるかどうかを調査できるよ。

 

これは化石では無理な話だという点も、

今回の点がスゴいことだよね!

 

 

端的に言えば、

古い地層の生物からDNAを取り出して

分析できるというのは、

 

タイムマシンで同じくらい古い時代の地球に行き、

当時の生物を捕まえてきた

ってレベルの話だよ。

 

いかにスゴい発見か、

少しは分かりやすくなったかな?

 

 

今回の研究で分かっていることと

分かってないこと

 
 
 
 
20.5億年前の生物の発見の注意点

 

図6: 今回の研究は、

未知な部分もたくさんあるよ。

 

また、現段階ではプレプリントなので、

第三者チェックはこれからだよ。

 

また、主張の内容が内容だけに、

厳しく見られるは確実だね。

 

 

さて最後にまとめとして、

この研究では正確には何が分かったのか、

という点を説明するよ。

 

この情報を整理しないと、

分かっている部分と分かっていない部分を

混同して勘違いしかねないからね。

 

 

まず、

今回の研究で何が見つかったのかと言えば

「生物の細胞と思われる有機物」と

「サイバーグリーンを入れると蛍光する物質」だよ。

 

最初の点は、

実際の細胞と分析値を比較して、

多分細胞だろうと言ってる感じだよ。

 

後者は、

DNAに結合しやすく、

他の物質には結合しにくい性質を持つ

サイバーグリーンを使って蛍光を確かめているので、

恐らくはDNAがあると推定されたんだよね。

これが生きた細胞の根拠にもなっているよ。

 

 

DNAを分析し、

どんな生物でありどんな遺伝子を持っているのか

というゲノムを明らかにすれば、

より強く “生きた細胞を発見した”

と主張できるわけだけど、

 

今のところはそこまで分析されておらず、

現時点では予定としているよ。

 

結構ここがミソで、

今回の本文で私が “生物”

としか言ってこなかったのは、

 

 

そもそもこれが原核生物なのか

真核生物なのかという

基本的な分類も分からないけど、

 

ただ恐らくは生きた細胞であろう、

という点を踏まえたんだよね。

 

また、仮にDNAの分析が成功したとして、

正体が判明するには時間がかかるかもしれないよ。

 

もしかすると20億5000万年の

間にかなり進化してしまい、

 

今知られている生物との関連付けができない

特殊なヤツになってるかもしれないからね。

 

 

一方で、

地下深くにいる原核生物の進化速度は

かなり遅いことを考慮すると、

それほど進化をしていないために、

 

今知られている生物の中でもかなり

原始的なタイプと比較することで、

何らかの関連付けができる可能性もあるよ。

 

 

いずれにしても、

今はDNAの分析をしなきゃこれ以上のことは

言えないのよね。

 

せっかく生きた状態で見つかった以上、

DNAの分析は研究の正しさを主張するためにも

行うべきであるという話なのだから、

やるとか言えば当然やるなんだけどね。

 

 

そして分析に成功すれば、

この生物は20億5000万年かそれに近い

時代の原始的な特徴を持っているかもしれない

 

という点で、

生命の進化を探る上での重要な

情報を提供してくれるかもしれないよ!

 

なお、

この研究は厳密にはプレプリント段階であり、

第三者によるチェックである査読を

通っているわけじゃないよ。

 

なので厳しい態度で言うなら、

現時点ではこれを科学的成果と

見ることはできないんだよね。

 

 

ただ、プレプリントの内容がほぼそのまま

査読誌に載ることは珍しくないし、

 

だからこそプレプリントの内容を前提に

内容の妥当性を議論し合う土壌があるので、

 

プレプリントだから語るのが全て

時期尚早とまでは言えないよ。

 

 

そして、

20億5000万年前の生物が現在まで

生存していたという、

 

これほど強い内容の主張をする論文なら、

いつも以上に注目され、

厳しく見られるのは当然だと思うよ。

 

メディアに取り上げられたかどうかは

二の次の問題だね。

 

相互に批評し合い検証を行うのが

科学の根幹であり健全性を保つ手段でもあるので、

 

注目される研究で賛否両論が多く出てくるのは

ある意味当然だよ。

 

なのでこの研究が正しいかどうかも含め、

これから注視していくべきとなるね。

 

私自身は研究の妥当性を判断できないけど、

ただ本当の話だったらスゴくワクワクすることなので、

是非本当であってほしいし、

だからこそ期待を込めて今回解説した感じだよ。

 

私はこの先の発展を信じてるよ!

 

 

そして蛇足として、

仮に研究成果が全て正しいとしても、

この生物を “20億5000万年前の生物”

と呼ぶのは危険だと思うよ。

 

これは、

私が一貫して “20億5000万年前から現代まで

生き延びた生物” と呼んでいることと関連しているよ。

 

 

こんな極端な環境にいるので、

代謝や細胞分裂の速度は

相当遅いことは予測はできるけど、

 

それでも全く細胞分裂をしていないというのは

考えにくいので、

 

その意味では世代を重ねていた

可能性は高いと言えるんだよね。

 

確かに、

細胞分裂で増える単細胞生物は、

クローンを作るという意味で寿命がないと

言われることもあるけど、

 

例えばゾウリムシは細胞分裂の

回数に制限があり、

有性生殖をしなければ死んでしまうんだよね。

 

 

よって、

この生物も細胞分裂の回数に制限があり、

有性生殖というクローンではない

方法で世代を重ねる、

という可能性は十分にあるよ。

 

 

一方でこれまでの研究から、

大腸菌や酵母の中には、

環境を整えると細胞分裂の回数制限がなくなり、

 

クローンを作るという意味合いにおいては

本当に寿命が無くなるかもしれない、

という研究結果もあるんだよね。

 

 

本来ならこれは、

細胞分裂1回を寿命と数えるべきだけど、

 

とはいえ事実上は寿命なしといえるね。

 

ただし、ずっとクローンを作り続けるとは限らず、

ゆっくりと進化して元の状態とは

変化する可能性も否定はできないよ。

 

 

従って、

今回の生物を “20億5000万年前の生物”

と呼ぶには、

 

この生物の細胞分裂は回数制限がなくなっており、

かつ進化も全くしていない、

ということを証明してからになると思うんだよね。

 

 

正直、

仮にそんなびっくりな状態になっていたとしても、

証明するには相当な時間がかかると思うよ。

 

それまではこの生物は 

“20億5000万年前から現代まで

生き延びた生物”

と呼ぶべきだと私は思うんだよね。

 

 

注釈

[注1] 白金族元素
ルテニウム・ロジウム・パラジウム・オスミウム・イリジウム・白金の6元素の総称。いずれも貴金属であり、産業的に重要な用途があります。比重が重いために地球の深部へと沈み込むため、地表では珍しい元素ですが、マントルという深部から湧き上がってきたマグマの中には比較的豊富に含まれていることが、ブッシュフェルト複合岩体が世界最大の白金族元素の鉱床となっている理由です。  

 

 

[注2] 生物の細胞に含まれる有機物の化学結合
今回のO-PTIR分光法による分析では、「アミド結合」と呼ばれる化学結合が見つかっており、比較用に分析された真正細菌および古細菌のものと一致しています。これだけで細胞があることの証明となるデータではないものの、DNAと共に生物の細胞があることを示唆するデータです。  

 

 

[注3] 蛇紋岩化反応で生じる粘土鉱物
粘土鉱物の種類は多種多様です。今回分析された粘土鉱物は、その結晶構造からスメクタイト (Smectite) と呼ばれるグループに属していること、化学成分として最も多いのが石鹼石 (Saponite) であることが分かっています。 

 

 

[注4] 生命の誕生は40億年前より以前
今回は3つの研究を元にこのような表現をしています。「分子時計モデルでは、全ての生命の最後の共通祖先は44億7700万年前から45億1900万年前に出現した (Betts, et al. 2018)」「熱水噴出孔から少なくとも37億7000万年前、恐らくは42億8000万年前の生物の微化石と思われるものが見つかった (Dodd, et al. 2017)」「41億年前のジルコンから、生物の代謝によって同位体比が変わったと思われる炭素が見つかった (Bell, et al. 2015)」 

 

 

[注5] 進化速度の指標となった真正細菌
培養に成功していないため未記載種となっている「Candidatus デスルフォルディス・アウダクスビアトル (Candidatus Desulforudis audaxviator)」の事です。  

 

 

<参考: >  

 

 



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