「急性心不全の原因」はご存知ですか?
なりやすい人の特徴も医師が解説!
急性心不全の原因とは?
Medical DOC監修医が急性心不全の
原因・症状・なりやすい人の特徴・検査法・
治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。
気になる症状がある場合は
迷わず病院を受診してください。
小鷹 悠二(医師)
「急性心不全」とは?
心臓は血液を送り出すポンプの働きをしており、
体の血液を循環させる中心的な働きをしています。
心臓のこのような血液を送り出すポンプの作用が低下し、
うまく血液が送り出せなくなってしまった状態を、
心不全と呼びます。
そして心不全が急に出現した場合には、
急性心不全と呼ばれます。
急性心不全の主な原因
心不全は、
原因となる病気があって生じる病態です。
ここではどのような病気が心不全の原因となりうるか、
解説していきます。
心筋梗塞・狭心症などの
虚血性心疾患
心臓の筋肉を動かすためには、
心臓の表面を走行する血管(冠動脈)から
心臓の筋細胞に栄養や酸素を供給する
必要がありますが、
この冠動脈の血流が低下してしまい、
心臓に血液が十分に供給できなくなると、
狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を生じます。
典型的な症状としては締め付けられるような、
踏みつぶされるような強い痛みを生じることが多く、
狭心症では5-15分程度、
心筋梗塞では狭心症よりも長い時間持続します
(多くは30分以上)。
心筋梗塞では胸痛だけでなく、
呼吸困難、意識障害、臓器障害など、
より重症な症状を生じることも多いです。
広い範囲の筋肉に血流障害が生じてしまうと、
筋肉が動けなくなり、
突然の心臓の機能低下を生じ、
急性心不全を生じることもあります。
心筋梗塞は緊急での対応が必要であるため、
動けないような強い胸痛が出現した場合には、
速やかに救急要請を行い、
少しでも早く病院で治療を受ける必要があります。
不整脈
心臓は血流を送り出すポンプの働きをしており、
心臓が動くためには電気刺激が心臓の
上の部屋(心房)から生じて、
下の部屋(心室)へと伝えることで、
順番に心臓の部屋が動き、
効率的に血液を送り出すことができます。
この心臓の筋肉を動かすための
電気の流れに異常が生じ、
脈が病的に速くなる・遅くなる、
又は脈が不規則になってしまうような状態を
不整脈と呼びます。
不整脈はさまざまな種類があり、
治療が必要ないような軽いものもありますが、
中には脈の異常を生じる事で
心臓に強い負荷をかけてしまい、
心不全を引き起こしてしまうようなものもあります。
心房細動や心室頻拍、高度房室ブロックなどの
不整脈は心不全の原因となることも多いです。
期外収縮は通常は治療が不要なことが多いですが、
回数が多い場合には心不全を
引き起こしてしまうこともあります。
心臓弁膜症
心臓は血液を送り出すポンプの働きをしていますが、
その中は4つの部屋に分かれており
(上の部屋は右心房と左心房、
下の部屋は右心室と左心室)、
それぞれの部屋の間と、
心臓の出口である大動脈の入り口には
フタ(弁)があります。
この弁の閉まりが悪くなる(逆流症)、
開きが悪くなる(狭窄症)といった、
弁の機能が悪くなった状態を心臓弁膜症と呼びます。
軽度な場合には無症状なことも多いですが、
病気が進行してしまうと、心臓の負担が大きくなり、
心機能の低下を引き起こし、
心不全の原因となってしまうことがあります。
心筋症
心臓の筋肉に異常が生じてしまい、
心臓の機能が低下してしまう病気です。
心臓の筋肉が病的に厚くなったり、
逆に極端に薄くなってしまうことがあります。
拡張型心筋症や肥大型心筋症といった
病気が代表的です。
心筋症の中には遺伝子の異常や
ウイルス感染などが原因となるものもありますが、
原因が分からないものが多いのが現状です。
初期の段階では無症状や症状があっても
軽微であることが多いですが、
進行すると心臓の機能低下を引き起こして、
心不全の原因となってしまうことがあります。
考えられる原因
心不全はいろいろな病気が原因で
引き起こされることがあるため、
その症状もさまざまなものがあります。
ここでは、
代表的な心不全の症状について解説します。
息切れ、呼吸の苦しさ(呼吸困難感)
心不全症状を引き起こした場合に
生じやすい代表的な症状の一つです。
心不全症状での典型的な呼吸苦症状は、
横になった際に心負荷で肺にたまった胸水が
肺全体に広がるため呼吸の苦しさが悪化し、
体を起こすと楽になる起坐呼吸という症状があります。
それ以外にも、
動いたときに息切れが出現し易くなることもあるため、
それまでできていた動作で
息が切れるようになってきた際には、
心不全の可能性も疑う必要があるため、
早めに病院を受診する必要があります。
起坐呼吸は心不全が急に進行した場合などに
よく生じるため、
自覚する場合には救急外来の受診など、
速やかな受診が必要です。
動くのが大変な呼吸困難が生じる際には
緊急性が高い可能性もあるため、
救急要請を検討しましょう。
胸痛
心筋梗塞や狭心症だけでなく、
心不全や心臓弁膜症などの疾患でも、
冠動脈の血流が低下してしまうと胸痛を生じます。
典型的な心臓の血流障害の症状としては、
胸の中心~左側の締め付けられるような、
押しつぶされるような強い胸痛であり、
冷や汗を伴うような強い症状のことも多く、
左肩~顎や奥歯まで苦しくなる
放散痛を伴うこともあります。
数分で改善しないような強い胸痛の場合は、
速やかな救急要請が必要となる、
緊急性が高い状態となっている可能性が高いです。
もし短時間で落ち着いたとしても、
それまでなかった症状が出現している際には
早期の循環器科受診が必要です。
動悸
不整脈が出現した際や、
心不全で呼吸が苦しくなる時に
出現することが多いです。
ただ、動悸と一言で表現しても、
さまざまな症状を動悸と表現することがあります。
そのため、
動悸の場合には脈が速い状態なのか、
脈の乱れがあるのか、
脈が速くも乱れてもいないが鼓動だけ
強く感じるのか、
ということが伝えられると、
より早い段階で診断・治療に
結び付けることができます。
動悸以外に胸痛や強い呼吸苦症状を
伴う場合には緊急性が高い可能性があるため、
救急要請も検討が必要です。
短時間で改善する、
症状はあるが軽い場合には早めに
循環器科を受診することを検討しましょう。
強い動悸やめまい・ふらつき・失神などの
症状がある際には、無理に動かず、
横になって楽な姿勢を取り、
速やかに救急要請をする必要があります。
めまい、ふらつき、失神
心不全によって体の血液の循環に
障害が生じたり、
脈がゆっくりとなる不整脈や
心臓弁膜症などで出現することがあります。
症状を自覚したら、
まずは転倒・失神などをしないように
座り込むか横になりましょう。
そして可能であれば自分で脈をチェックし、
脈の速さの異常や乱れがないかを確認してください。
脈がゆっくりになり過ぎる
不整脈が原因の場合には、
ペースメーカー埋め込み術などが
必要となることがあります。
失神まで起こす場合は、
緊急での処置を必要とする状態の可能性もあるため、
できる限り速やかな受診が必要です。
心臓病が原因の失神は、
徐々に気が遠くなるというよりは、
突然ブツンと意識がなくなる、
気が付いたら倒れていたというタイプの
症状が多いため、
このような症状では特に注意が必要です。
急性心不全になりやすい人の特徴
急性心不全は、生活習慣病や心臓疾患が
原因で生じることが多いため、
高血圧や脂質異常症、糖尿病で治療をしている方、
心臓の病気がある方は注意が必要です。
また、喫煙や過度の飲酒、高度の肥満や
運動不足などによって生活習慣病を引き起こし、
心不全を起こしやすく、
高齢の方ほど起こしやすくなります。
生活習慣病がある方
高血圧や脂質異常症、
糖尿病などの生活習慣病によって、
動脈硬化の進行や心臓の負担が増えることで、
心疾患を引き起こし心不全を発症しやすくなります。
特に治療期間が長い、
未治療の状態などは高リスクとなるため、
しっかりと通院・治療をすることが必要です。
心臓の病気がある方
急性心不全の原因として、
心筋梗塞や不整脈、
弁膜症などさまざまな心臓の病気があります。
これまでなかった胸痛や動悸、
息切れなどの症状が出現する場合には
心不全の危険もあるため、
早期に病院を受診することが重要です。
症状が強い場合、改善しない場合には
緊急性が高くなるため、
救急要請が必要となることもあります。
元々心臓病を指摘された病歴のある人は、
通院・治療をしっかり継続し、
定期的に検査を受けて心臓の状態を
評価することが大切です。
高齢者
基本的には高齢になるほど動脈硬化が進行しやすく、
さまざまな病気を持っていることも多いため、
高齢であること自体が心不全の大きなリスク因子です。
急性心不全の検査法
心電図
12誘導心電図とも呼ばれ、
心臓の中の電流を12カ所の視点から
評価する検査です。
両手首と両足首の電極で評価した6つの波形と、
前胸部の6つの波形を合わせた
12種類の波形が記録できる。
多くの診療科で一般的に行われる検査ですが、
心臓の異常を評価するには非常に重要な検査です。
心臓の血流障害や不整脈を評価することができ、
異常を認めた際にはより詳しい
検査を行うことになります。
胸部レントゲン検査
X線という電磁波を用いて、
体内の状態を評価することができる画像検査です。
心不全では心臓の大きさ、
肺に水が溜まっていないかといったことなどを
評価することができます。
血液検査
心不全を評価するBNP、NT-proBNPといった項目や、
心不全による血流障害によって
臓器障害が生じると肝臓や腎臓の
数値が上昇することがあります。
心不全による変化だけでなく、
心不全の原因となるような病気による
数値の異常が認められることもあり、
非常に重要な検査で、
多くの病院で実施ができる一般的な検査です。
心臓超音波
超音波を利用して心臓の動きを可視化して
評価することができる検査です。
心臓の動き具合、
形態の異常、心臓内部の弁の異常など、
心臓の病気を評価するうえで非常に
重要な情報を得ることができます。
針を刺したりせず行えるため簡便で安全性が高く、
心不全治療を行う上で必須の検査です。
心臓CT/MRI検査
心臓の血管の評価、
動きや形態の評価などを行うことができる検査です。
狭心症や心筋症などの心疾患の評価、
心臓の機能の評価をするうえでは非常に
有用な検査です。
専門的な病院でないと実施ができないため、
どこでも実施できる検査ではありません。
心臓カテーテル検査
心臓の血管の流れ具合の評価や、
心臓内の圧の測定をすることで
心不全や弁膜症の状態・重症度の
評価などをすることができる検査です。
手足の太い血管から、柔らかいプラスチック製の
カテーテルという管を心臓まで入れて検査を行うため、
入院で実施することが多く、
出血や血管を傷つけてしまうリスクもある検査です。
ただ詳細な心臓の評価ができるため、
心臓病の治療においては非常に重要な検査です。
急性心不全の治療法
急性心不全を起こしてしまった場合は、
原因疾患や重症度に応じてさまざまな
治療が行われます。
心不全の管理は専門である循環器科が行い、
心不全の原因となった病気の治療と、
心不全そのものに対する治療の両方が行われます。
実際にどのような治療が行われるのか、
詳しく解説をしていきます。
薬物治療
利尿剤や強心剤、
心臓を保護する薬剤などを投与して治療を行います。
軽症であれば内服薬を使用しますが、
重症度が高い場合には注射や点滴で投与を行います。
呼吸管理
心不全の重症度が高くなると、
肺に水が溜まってしまうことによる
呼吸障害が強くなってしまいます。
そのため、
呼吸をサポートする治療が必要となり、
酸素の吸入や陽圧をかけるマスクを装着した治療、
より重症となると人工呼吸器を装着した
高度な治療が必要となります。
循環管理
急性心不全によって心臓の機能が大きく低下し、
全身に血液が送れなくなってしまった場合には、
血液の循環をサポートするために
血管の中にカテーテルを用いて風船(バルーン)を入れ、
心臓の動きに合わせてバルーンを
拡張・収縮させることで心臓の働きをサポートする
大動脈内バルーンパンピング(IABP)や、
心臓の代わりに体外のポンプから
酸素化した血液を送り込む人工心肺などの
補助循環装置を使用することもあります。
「急性心不全の原因」
についてよくある質問
ここまで急性心不全の原因などを紹介しました。
ここでは「急性心不全の原因」についてよくある質問に、
Medical DOC監修医がお答えします。
若い人が急性心不全を発症する
原因について教えてください。
小鷹 悠二 医師
基本的には高齢者で起こりやすい病気ですが、
下記のような病気の場合には若年者でも
発症することがあります。
・先天性心疾患:生まれつきの心臓の病気
・遺伝によって生じる不整脈(Brugada症候群、
QT延長症候群など):遺伝によって生じる
不整脈が出やすくなる病気
・心筋炎や心膜炎:ウイルス感染などが原因となって
心臓の筋肉や表面を覆う膜(心膜)に炎症を起こす病気
ストレスが原因で急性心不全を
発症することはありますか?
小鷹 悠二 医師
ストレスが原因で狭心症や心筋梗塞、
不整脈などが悪化し、
心不全を引き起こすことがあります。
そのため、
ストレス管理や十分な休息をとることも、
非常に大切です。
急性心不全は命に関わることもある、
非常に危険な病気です。
病気について正しく知ることで、
対策や早期の発見・治療に繋げていくことが
とても大切なことになります。
「急性心不全の原因」
と関連する病気
「急性心不全の原因」と
関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細は
リンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
喫煙や過度の飲酒などの習慣がある場合、
高度の肥満や運動不足である場合、
高血圧や脂質異常症、
糖尿病などの生活習慣病がある場合は
心臓の病気を引き起こしやすいことが
知られています。
また、高齢の方ほど起こりやすくなるため、
日頃から生活習慣には気をつけていくことが大事です。
「急性心不全の原因」と
関連する症状
「急性心不全の原因」と関連している、
似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細は
リンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。