見逃すと取り返しがつかない…
「隠れ心不全」「隠れ脳梗塞」が
日本人に急増中!
恐ろしすぎる「異変」を
見つけるための「唯一の方法」
新潟大学大学院医歯学総合研究科・
循環器内科学主任教授の猪又孝元氏が言う。
「あまり知られていませんが、
この20年間で、
新たな心不全患者はほぼ倍増していて、
医学界では『心不全パンデミック』と言われるほどです。
心臓に不調があっても、
患者さんは疲れや歳のせいだと思って見過ごし、
医者もなかなか気付かないことが多い。
そうした小さな心不全が、
最終的に大きな発作につながるのです」
「Xデー」がやってくるか否かは運次第、
そのときは腹を括るしかない。
そんな「脳梗塞」「心不全」観は、
もはや時代遅れだ。
致命的な発作が起きるはるか前から、
脳や心臓は壊れ始めている。
「いきなり来る」だけじゃない
ある日突然、脳や心臓を走る血管が詰まって、
卒倒してしまう。
こうした症状は英語で“attack”や“stroke”と呼ばれ、
どちらも「突然の一撃」というニュアンスが込められている。
脳梗塞や心不全と聞くと、
そんなイメージを抱いている人は多いはずだ。
ところが近年、
じつは脳梗塞や心不全は、
このように「いきなり襲ってくる」ものだけではないという
新たな事実が明らかになってきた。
「いま、検査機器の発達と高齢化によって、
自覚症状のまったくない
『隠れ脳梗塞』が見つかる人が増えています。
40歳をすぎたあたりから現れ始め、
60代では3割、70歳をすぎると4割、
一説には半数を超える人が隠れ
脳梗塞を持っているとも言われるほどです。
高齢で、
かつ隠れ脳梗塞がある人は、
後で本格的な脳梗塞を起こす危険性が
高いと言えます」
'19年に、
上皇后美智子さまが「日課の朝の散歩のあと、
息切れがする」と訴えて宮内庁病院を受診した。
これは、
専門医のあいだでは
「隠れ心不全が運良く見つかった事例」として有名だ。
新潟大学大学院医歯学総合研究科・
循環器内科学主任教授の猪又孝元氏が言う。
「あまり知られていませんが、
この20年間で、
新たな心不全患者はほぼ倍増していて、
医学界では
『心不全パンデミック』と言われるほどです。
心臓に不調があっても、
患者さんは疲れや歳のせいだと思って見過ごし、
医者もなかなか気付かないことが多い。
そうした小さな心不全が、
最終的に大きな発作につながるのです」
まず、記事の前半では、
隠れ脳梗塞とはどのようなものなのかを
詳しく見てゆこう。
大前提として、
隠れ脳梗塞は海外では
“silent brain infarction”(静かなる脳梗塞)と
呼ばれるほどで、
症状がまったくと言っていいほどない。
手遅れになる前に見つけるには、
人間ドックや脳ドックでMRI(磁気共鳴画像)
検査を受けるしかないのが現状だ。
「脳の内部を画像で調べる方法には
CT(コンピュータ断層撮影)検査もありますが、
MRI検査のほうが有用です。
MRI検査はCT検査よりも時間がかかる一方で、
分解能、
つまり脳内を細かく見る能力が高く、
CT検査では描出できない病変もわかります」
MRIでは、こう見える
ちなみに、
隠れ脳梗塞を見つけるための検査は
「治療の一環として受ける検査」とはみなされないため、
保険適用外だ。
脳ドックの費用は3万円ほどが相場である。
では実際にMRI検査を受けると、
どんなふうに見えるのか。
上の図に示したように、
MRI検査を受けたとき、
隠れ脳梗塞には3つの見え方がある。
いちばん多いのが、
小さな白い影が映ったように見えるというものだ。
人の脳の中には、
総延長およそ600kmにもなる血管が
縦横無尽に走っている。
その大部分が極細の毛細血管だ。
脳の組織を1mm四方のサイコロ型に切り出すと、
その中には1m分もの毛細血管が詰まっていると言えば、
どれだけ脳が「血管のかたまり」か実感できるだろう。
隠れ脳梗塞では、
こうした細い血管が梗塞(詰まること)を起こし、
まわりの脳細胞が死ぬ。
範囲が狭いため、
大きな脳梗塞のように「歩けなくなる」
「頭痛がする」「突然倒れる」といった
大異変こそ起きないが、
MRI検査をすると、
死んだ脳細胞が白く小さな影として映り込む。
ラクナ梗塞の原因は多くが動脈硬化で、
『運動線維』という体の動きをつかさどる
神経が走行していない場所で起きた場合、
運動麻痺の症状が出づらいのです」
さらに、
「隠れ脳梗塞」になる人には「自覚症状」
とまでは言えないが、
なんらかの「予兆」があることもある。
<参考:循環器内科学主任教授の猪又孝元氏>