八ヶ岳を巡る、聖なる水と歴史の旅⑥ 8月も終わりに近づいたある日、 前号でお話を伺った諏訪ガイドスペシャリスト・ 谷澤氏に「ちょっと面白いお祭りがあるのですが、 行ってみませんか?」と 誘われ、原村へと足を延ばした。 ![]() 諏訪大社のサイトによると、その祭りは 「御射山祭」と呼ばれ、毎年8月の終わりに 通常3日間に渡って執り行われるという。 その内容は簡単に言うと、 諏訪大社から神様がお御輿に乗って 御射山へ出張し、祭事を執り行うというものだが 今年はコロナ禍で1日に短縮して行われた。 ちなみに、諏訪大社の神様と言えば、 建御名方命とその后神である八坂刀売命という イメージがあると思う。 記者も右に習えの知識しかなかったのだが、 実は上社には国之常立神をお迎えして行われる 唯一の祭りなのである。 ![]() 国之常立神といえば、古事記においては 最初に登場した神と呼ばれ、 宇宙の根源神として広く知られている事だろう。 また、新興宗教である大本教・出口直に降りた 神としても知られている。 とまぁ、そんな背景を持つ国之常立神が、 この日は上社から御射山神社へ輿に乗って 移動する。 松林の中に仮本殿が作られ、そこで人々が ご祈祷を受ける。 つまり、この日ばかりはここが諏訪大社上社 なのです。 また、この御射山祭りは別名「はら山祭」とも 呼ばれており、 御射山神社に元々鎮座している神様を、 原村一帯に住む地元の人たちは 「はら神様」と親しみを込めて呼んでいる。 ![]() はら山様は子どもの疫病を摂ってくださるとされ、 地域の子供たちは満2歳を迎えた御射山祭りの日に、 神様が乗ってきた輿の下をくぐり、 祈祷を受けた後、八ヶ岳南麓から流れてくる 清流へドジョウを放って厄を流す。 ![]() 「はら山」を「腹が病まない」とかけているのです。 また、どっしとりと地に根を張った松林の中では、 弓を弾く人たちが的を狙って次々に矢を 放っていた。 お話を伺うと、 この林は比較的歴史が浅く、 江戸時代頃に植えられたものだそうだが、 毎年少しずつ大きくなってゆく松林の間から、 的を狙うのがだんだん難しくなっているそうです。 ![]() というわけで「御射山祭」には実に様々な 背景が混在している不思議な祭りであるが、 もうひとつ、 この祭りは別名「風祭り」とも称されている。 その呼び名のとおり、 松林の中に吹き抜ける風は、 何とも言えない心地よさを感じるのだが、 そこに若き日の武田信玄(春信)公の 香りを感じた。 馬を操り、八ヶ岳の大地を疾風の如く 駆け抜ける若武者の姿。 その道中にある御射山神社の境内に ある幾つもの祠に手を合わせ、 時に清流で喉を潤したに違いない。 ![]() 信玄公はのちに村同士の水争いを治めるべく、 現在の北杜市長坂町に三分一湧水を作った。 戦国の風雲児は、偉大な歴史を作ると 同時に水を操る者でもあったのです。 2020年も残すところあと3ヶ月ほどとなったが、 占星術ではこれから12月の冬至頃から迎える 時代は、 これまでの「地の時代」から「風の時代」に 突入すると言われている。 モノや土地などを象徴する所有の時代から それらから解放され、自由に生きる風の時代へ。 コロナ禍をきっかけに都市から離れ、 好きな場所で自分らしく生きる人たちが、 まさに風の時代の住人として私たちが これから迎える時代を、 信玄公に様に軽やかに駆け抜けて いきたいと思う。 1喧嘩はするな、 2意地悪はするな、 3過去をくよくよするな、 4先を見通して暮らせよ、 5困っている人を助けよ、 |